日時2023年3月26日(日)日本時間20時〜21時
参加者現役生
・重田良輔(ジュウダ・リョウスケ)、The University of Liverpool, Football Industries MBA(通称FIMBA)在学(イギリス)
・渡邉宏樹(ワタナベ・ヒロキ)、The Football Business Academy(通称FBA)在学(スイス)
・井村瞭介(イムラ・リョウスケ)、Loughborough University, Sport Business and Leadership在学(イギリス)- 今回は欠席、次回より参加

SPORT GLOBAL事務局
・辻翔子(FIFPRO)オランダ在住
・阿部博一(アジアサッカー連盟)マレーシア在住

企画の概要説明

SPORT GLOBAL現役生企画は、現在海外の大学院でスポーツ分野について学んでいる日本人に、入学までの経緯、大学院の授業、同級生について、そして日々の生活で気付いたことなどをインタビューしていく企画です。2ヶ月に1回程度の頻度でインタビューをしていき、卒業、そして就職までの道のりをリアルに追いかけていきます。

2020年にSPORT GLOBALのメインプロジェクトとして始まった現役生企画も今年でシーズン3 に突入。これまで日本or海外学部卒→大学院、就業→大学院など様々なキャリアを持つゲストに参加して頂き、イギリス、スペイン、アメリカ、フランスなど、複数国のスポーツマネジメント系の大学院プログラムを紹介して来ました。

シーズン3では、日本の学部卒→大学院、就業→大学院、就業+大学院という、それぞれ異なるバッググラウンドを持つ3名に参加して頂いています。FBA、FIMBA、Loughborogh大学という、今回初めて取り上げる大学院プログラムに、SPORT GLOBALメンバーも興奮を隠せません!それではシーズン3の第1回をお楽しみください。

今回、井村瞭介氏(Loughborough University, Sport Business and Leadership在学)は欠席です。次回から参加予定です。井村氏は、Sport Globalにて留学までの道のりを書いた、イム日記(https://sportglobal.jp/category/study-overseas/study-abroad-preparation/)を掲載しているので、そちらをご覧ください。また、ポッドキャスト(https://sportglobal.jp/2022/12/15/https-sportglobal-jp-2022-11-05-sport-global-podcast-kiku-sportglobal-season-3-episode-1-3/)でも井村氏の留学までの道のりを取り上げています。是非聞いてみてください。

まずは自己紹介から

渡邉宏樹さん(FBA

登場人物A渡邉宏樹さん

社会人年次のスタートは2011年で、新卒で入社した伊藤忠商事に8年間勤務しました。当時は繊維カンパニー(部門)に配属され、繊維素材のトレード事業に従事していました。キャリアの途中には北京、上海にも駐在させてもらいました。日本への帰国後に、スポーツビジネス業界への転職を改めて本気で考え始め、スポーツ業界で活躍されている様々な立場の方にアポを取ったり、スポーツビジネスの関連書物を読んだりし、情報収集を行いました。その際には、FIFAマスターやFIMBAの卒業生にも話を伺いました。海外のスポーツマネジメント系大学院に留学するか、日本のスポーツに携わる企業に一度ダイレクトに転職するか迷いましたが、当時の考えとしては、実践に勝る学びはないという判断の元、博報堂DYメディアパートナーズのスポーツビジネス局への転職を決めました。それから3年程経った後、やはり海外大学院で学びの必要性を感じ、Sport Globalの辻さんにも相談し、2022年の9月にFBAに入学しました。2023年3月迄はオンラインでの授業のみだった為仕事と両立していましたが、2023年4月以降は、インターンシップと現地でのモジュールが始まることから、2023年2月末で会社を退職しました。同級生たちもインターンシップが始まる段階で退職するケースが多いように思います。

重田良輔さん(FIMBA

登場人物A重田良輔さん

社会人年次のスタートは2014年です。出身が兵庫県で、関西にある商社で約7年間繊維関係の仕事をしていました。仕入れでロンドンや中国などの海外案件にも従事していました。2022年9月よりFIMBAに通っています。FIMBAの存在はSPORT GLOBALの記事を通じて詳しく知る事が出来ました。そこからFIMBAに繋がりのある人達に話を聞くなどして、更に情報収集をしました。FIMBAからは、2021年1月に合格を貰っていましたが、コロナ禍だったので入学を遅らせる選択(deferral)をしました。そのため2021年12月まで働き、その後退職して2022年9月から大学院生活をスタートさせた形です。

何故このタイミングで留学したのか?

登場人物A重田良輔さん

大学生の頃、イギリスに語学留学をしたのですが、その時、ホストファーザーが連れて行ってくれたプレミアリーグの試合が印象的で、そこからはいずれイギリスに留学したい、イギリスで働きたいと思うようになりました。サッカーは好きでずっとプレーしていましたが、イギリスの現地の熱気に感化されました。留学のタイミングをずっと見計っていましたが、その中でもコロナの影響は大きかったと思います。日本社会の行く先が不透明な中で、このまま日本にいても仕方がないなと思うようになり、留学に踏み切りました。留学の目的は、海外でサッカークラブに関するの仕事に就くことなので、卒業後、日本に戻るという事は今は考えていません。

登場人物A渡邉宏樹さん

大学卒業までは体育会でサッカーをプレーしていたので、スポーツビジネスというよりは、競技力の強化、育成という部分に興味を持っていました。ただ、新卒でいきなりそういったポジションで働くことがイメージできなかったので、就職活動時は、スポーツの報道やコンテンツ制作に関わるべく、テレビ局や広告代理店といったメディア関係の企業を中心に受けていました。結果、紆余曲折あり伊藤忠商事に入社することになりましたが、その時点でも、10年目途で働き、自分の考えが変わらなければいつか転職する、ということは選択肢にありました。伊藤忠商事で働くうちに、スポーツの競技側ではなくビジネス側、且つグローバルに働きたいという想いに変わり、一旦は博報堂DYメディアパートナーズに入社しましたが、より将来の選択肢を広げたいという考えがあり、このタイミングでFBAに入学することに決めました。

FIMBAに留学を決めた理由

登場人物A重田良輔さん

まず、卒業生が多くサッカー業界で活躍しており、実績があるということ、また、元々リバプールFCのファンで、2年に一度ぐらいリバプールに試合を観に行っていたので土地勘がありました。あと知り合いがいるという事もあって、現地に住むということを含めて考え、ほぼFIMBA一本で出願の準備を進めました。他にもFIFAマスターも考えたのですが、留学エージェントから現状の実力(英語力など)から厳しいのではないかとフィードバックを貰い、FIMBAに絞ったかたちです。

登場人物BSG事務局阿部

以前お話した際に、願書を先に出して、そこから英語(IELTS等)の要件を満たして入学したと言っていましたが、その辺りの話を詳しく聞かせて欲しいです。

登場人物A重田良輔さん

自分のケースだと、願書を先に出して条件付き合格(Conditional Offer) を貰い、その後、入学までに英語力の要件を満たすという出願方法を取りました。FIMBAには、現在日本人が6名在籍しており、同級生の中には、リバプール大学のプレマスタースクールに1年前から留学して入学した生徒もいます。プレスクールも相当タフなプログラムで、レポートなどのアサイメントが大学院同様に求められるそうです。なので、プレスクールに通った方は、実質2年間の大学院プログラムに参加するような形になっています。

FBAに留学を決めた理由

登場人物A渡邉宏樹さん

博報堂DYメディアパートナーズでは、サッカー以外にも、野球やゴルフなどの他スポーツも多少担当させてもらいましたが、代理店という立場では、各担当スポーツのチームの状況や選手情報に加え、歴史や文化背景含め全体を把握しておかなければ、コンテンツホルダーやクライアントと良い仕事は出来ないと肌で感じていました。その為、複数のスポーツでエキスパートになることは難しいと考え、であれば、やはり自分が一番興味のあるサッカーに集中したいと思い、FBAに決めました。元々FIFAマスター、FIMBA、AISTSなども調べていて選択肢にありましたが、何よりFBAを選んだ大きな理由としては、オンサイトのコミットメントが約半年のみという点です。自分は結婚しており子供もいるので、子育てを1年間離れるのと半年では大きな違いでして。4月からインターンシップが始まりますが、これも現地参加ではなく、リモートと出張を組み合わせての実施となりそうなので、家を離れる期間を最小限に出来ます。語学力の向上や、現地でのネットワーキング、文化的な学びの価値は十分に理解していますが、今の自分のライフステージを鑑みると、それが一番の決定打でした。

登場人物BSG事務局辻

渡邉さんは、FBAに参加する初めての日本人ですよね。あと、ヨーロッパ時間のプログラムを日本から受講するの大変ではないですか?

登場人物A渡邉宏樹さん

日本人初でしたね。次の期には一人日本人の参加者がいるみたいですが。時差があるリモートでの受講は、確かに生活リズムの調整は難しかったです。FBAはベースがある教育機関ではないので、各分野のエキスパートがゲストスピーカーになるのですが、その都度授業の時間も変わります。ゲストスピーカーは基本的にヨーロッパかアメリカ在住でしたので、日中はいつも通り働き、日本時間の夜中に受講、という形でした。あとは、元々英語が出来る訳ではなかったので、仕事と家族との時間と、勉強する時間の調整も中々簡単ではなく。。週末にある程度纏めて勉強する時間が欲しかったので、留学プログラムの説明や、何故FBAか、将来的な選択肢など含めて、事前に妻の理解を得るべくプレゼン資料も準備してきちんと説明しました。

登場人物BSG事務局辻

コロナで色々制約が出来ましたが、FBAのようにリモート、オンサイトのハイブリット型のプログラムなどが出てくるきっかけになったという点では、ポジティブな部分もあったのかなと思います。

実際の留学準備に関して

登場人物A重田良輔さん

準備で一番手間だったのは推薦状ですね。FIMBAは、CV、パーソナルステイトメント、推薦状2通が出願に必要です。1通は職場、もう1通は出身大学から貰うという条件なのですが、大学の教授から推薦状を入手するのに1年近くかかってしまいました。出願プロセスで留学エージェントを活用していたのですが、自分はエッセイと推薦状などのチェックのみをお願いしたので、費用としては最初に1万円程度払ったのみです。英語資格に関してはほぼ独力でIELTSを受けていました。IELTSのサポートパッケージなどもオファーしていましたが、留学するまでなるべくお金を掛けたくなかったので、公式参考書をひたすら解く、オンライン英会話でスピーキングの練習、などをして対応しました。

登場人物BSG事務局阿部

シーズン2に参加してくれたアメリカ留学組は、エッセイ添削に数十万かかるケースもあると言っていたので、かなりリーズナブルですね。賢い留学エージェントの使い方だと思います。

登場人物A渡邉宏樹さん

FBAは推薦状は必要なく、英語(TOEFL or IELTS)、CV、モチベーションレター(ワード2枚分程度)、面接2回(各30~45分程度)のみで合否が決まります。CV、モチベーションレターは自分で準備し、その後、同じ会社で海外での代理店勤務経験もある、外国人の上司に添削をお願いしました。面接は、質問の半分ぐらいは、志望動機やクラスにどのように貢献出来るか等々、ある程度予測できる内容のものでしたが、残り半分は「日本サッカーがより発展するために、ビジネス面ではなく、文化面でどのように変わらなければならないか?」など、日本語でも答えるのに窮するような、哲学的な質問も幾つかありました。

留学費用はどのように工面したのか

登場人物A重田良輔さん

年間の授業料が約400万円、現地での生活費が約200万〜300万、その他にも学生ビザが一人当たりNHS(現地の保険)の加入を含めて20万~30万円かかります。なので合計で700万~800万円程度の費用がかかりますね。私の場合は、貯金に加えて、日本政策金融公庫から留学費用を借りました。イギリスの大学院は、授業料がどこも毎年50万ぐらい上がっていっているので、金銭的な面だけを考えるなら、なるべく早く留学した方が良いと思います。

登場人物A渡邉宏樹さん

授業料は約400万円ですが、カリキュラムの前半はオンラインなので海外での生活費は掛かりません。また、インターンを開始するまでの期間は仕事も継続しており、その収入もあったのは学費を工面する点で大きかったです。学費は貯金から支払いました。今後、最終モジュールを受講する為の、ポルトガルへの渡航費や滞在費など発生してきますが、それでも費用面はかなり抑える事が出来そうです。FBAは元々FIFAマスターの卒業生が中心に始めたプログラムなので、彼らがFIFAマスターで感じたペインポイントの改善をしており、留学費用も比較的抑えられていると思います。一方で、参加者の多くが仕事をしながら参加するので、仕事と大学院の勉強をきちんと両立出来なければ、中途半端な成果しか得られないかもしれません。

SPORT GLOBALからクロージング

登場人物BSG事務局

シーズン3も、海外大学院留学の新たな知見がたくさん得られそうです。第1回は留学までの経緯を中心にお話を伺いましたが、次回第2回は、学校の授業の内容、同級生などに関して、引き続き話を伺っていきます。

今後も定期的にインタビューを発信して参りますので、今後取り上げてほしいテーマや現役生に聞いてほしい質問などありましたら、こちらのお問い合わせフォーム、またはinfo@sportglobal.jpにメールをお送りください。

また海外の大学・大学院でスポーツを学んでおり、現役生企画に参加いただける方も随時募集中です。ご連絡お待ちしています。

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