この企画では国際スポーツ大会や国際機関へのボランティア活動参加経験や、ボランティア活動を通して海外スポーツ界への進出の機会を掴んだ方の経験談を紹介していきます。第2回では学生時代に数々の国際スポーツ大会ボランティアに参加し、現在海外スポーツ界への就職を目指しているSPORT GLOBALの井上巧さんに、これまで参加したボランティア活動やボランティア活動を通じて得たことを伺いました。

巧さんのプロフィール

井上巧(イノウエ・タクミ)
大阪市出身、Coventry University Sport Management学部を卒業。
欧州サッカー界への就職を目指して留学先をイギリスに決め、国内でスポーツマネジメントの評価が高かったCoventry Universityを選択。
登場人物B

インタビューQ&A

これまで参加したボランティア

イギリスの大学(Coventry University)在学中に以下3つの国際スポーツ大会のボランティアに参加しました。

①バドミントン全英オープン(2017)
ミックスゾーン(試合が終わった後メディアが選手へ取材をするエリア)での選手の誘導や日本人選手のインタビュー通訳などを主に担当しました。

②ワールドゲームズヴロツワフ大会(2017): 
競技施設(クライミング、ラクロス)の設営や観客・メディア案内(座席案内など)を担当しました。当時日本人ボランティアが自分1人しかいなかった為、日本から同大会の視察に来ていたスポーツ庁初代長官(鈴木大地氏)の案内等もしました。ワールドゲームズは4年に1度開催されている、オリンピックに採用されないマイナースポーツの国際競技大会です。

③ユニバーシアード台北大会(2017)
選手村での日本人選手の案内を担当し、主に日本人選手が滞在しているマンションで選手からの問い合わせ対応や選手村の案内等をしていました。ユニバーシアードは2年ごとに開催されている、大学生の為のオリンピック大会で、競泳の瀬戸大也選手や萩野公介選手をはじめ、現在サッカー日本代表で活躍している選手が多く参加していました。

ボランティアに参加したきっかけは?

大学在学中に海外スポーツに関連する仕事やインターンを探していたものの、英文履歴書(CV)に書ける経験が何もなく、なんでもいいのでスポーツに関わる経験が欲しかった為、まずはボランティアから始めたことがきっかけです。最初は大学が募集していたマラソン大会やスポーツチームの試合運営補助のようなボランティアをしていましたが、ワールドカップやオリンピックなど大規模な国際大会でボランティアを多く募集していることを知り、履歴書に一目見て目立つ経験が欲しかったので、自分でWikipediaのスポーツ国際大会一覧ページから参加できそうなボランティアを探すようになりました。

ボランティア参加にあたり必要な資格や条件、事前の準備はあったか?

大会によると思いますが、ボランティア参加に当たり18歳以上といった年齢制限や最低限の英語でのコミュニケーションができることなどの簡単な条件はありました。また、ワールドゲームズとユニバーシアードではボランティア募集の段階で11での面接があったので、ボランティアとしてやってみたいことなど簡単な面接準備もしました。大会開催地までの移動手段については自分で手配しましたが、当時参加したユニバーシアードとワールドゲームズではボランティアが寝泊まりする場所(21部屋で大学の寮のような場所)を無償で提供してくれました。

どのくらいの期間活動していたか?

イギリスの大学の夏休みが2ヶ月ぐらいと長かったので、休みの期間中にできるボランティアを探していました。基本的に毎日朝から夕方まで活動があり、2週間から1か月程度の期間の活動が多かったです。

どんな人が参加していたか?

基本的には現地の人(ヴロツワフ大会ならポーランド人、台北大会なら台湾人)で、社会人はほとんどおらず、自分と年代の近い若い学生の方が多かったです。また、世界中から色々な国の人がボランティアとして参加していて、ユニバーシアード台北大会の時はアフリカの今まで聞いたことがなかった国から来ていた方もいました。ボランティアを通じて色々な国の方と関わることができ且つ友達もできたので楽しかったです。少数ですが自分以外の日本人も参加していました。(ヴロツワフ大会1名、台北大会2名)

これまでのボランティアで印象的だった活動や出来事は?

バドミントン全英オープンのボランティアで、リオオリンピック女子ダブルスの金メダル選手であるタカマツペアのインタビュー通訳を任されたのですが、海外メディアからの質問や選手の回答を即興でうまく訳すことができず、通訳の難しさを感じ、恥ずかしい思いもしました。ただ、ボランティアの最終日にボランティアをまとめていたマネージャーに「自信をもってまた来年も来てね」と言ってもらえたのが、すごく嬉しかったし印象に残っています。また、当時大会に参加していた同世代の選手が、今各競技のトップレベルで活躍しているのを見ると、自分も頑張らないとなと今でも思わされます。サッカー日本代表がワールドカップ出場を決めた試合で活躍した三笘薫選手はユニバーシアード台北大会に参加していました。参加したボランティア活動ではコミュニケーションがすべて英語となり、英語が第一言語でないボランティアと一緒に協力して活動する必要がありましたが、たまに英語が理解できなかったりお互いに理解しあえなかったりするなど、言葉の壁に立ちはだかる場面もありました。

ボランティアの前と後で変わったことは?この経験を今後どう活かしていきたいか?

ボランティアを始めるきっかけであった履歴書の内容を充実させるという目的を果たせたことで、その後希望するスポーツ組織(FCフローニンゲンやアジアサッカー連盟)でSNSを使用した情報発信や審判部での教育プロジェクトサポートのインターンをすることができました。ボランティアをしていなければインターンは実現しなかったと思うので、積極的にボランティア活動に参加してよかったと思っています。海外では進学や就職の際にボランティア活動が評価されると聞くので、今後スポーツ界で仕事をするという目標を達成するために面接等でのアピール材料として活用していきたいです。

今後ボランティア参加を考えている人へ伝えたいこと

ボランティアとしてスポーツ大会にかかわると、単にお金を払ってスポーツ観戦するのとは違い選手の迫力や大会を支える方の活躍を近くで見ることで、普段とは違う視点でスポーツを感じることができると思います。何より色々な国の人と友達になれますし、海外で開催される大会であればボランティア活動のついでに観光することもできます。スポーツにあまり興味関心がない人にも一度スポーツボランティアに参加してほしいと思います。ボランティア募集は大会開幕の1年以上前から始まるものもあるので、先を見据えて情報収集することが大事だと思います。

各大会の最新のボランティア情報

①バドミントン全英オープン: Volunteer In Badminton | Badminton England
②ワールドゲームズ: Volunteer – The World Games 2022 | Birmingham, USA (twg2022.com)
③ユニバーシアード: Volunteer – Lake Placid 2023 World University Games

編集後記

海外スポーツ界での就職を叶える為、国際スポーツ大会のボランティアへ積極的に参加することでスポーツに関する経験を重ね、着実に海外スポーツ界へのステップを踏んでいる巧さんのお話から、ボランティアが海外スポーツ界進出の手段の一つとなりうることを改めて実感しました。巧さん貴重な経験を共有頂きありがとうございました。

ボランティア企画第2回国際スポーツ大会ボランティア参加者へのインタビュー、いかがでしたか?今後も国際スポーツ大会や国際機関でのボランティア活動経験等を纏めていきますので宜しくお願いします。今後取り上げてほしいテーマや聞いてほしい質問などありましたら、こちらのお問い合わせフォーム、またはinfo@sportglobal.jpにメールをお送りください。

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