日時 | 2月26日(土)日本時間22時〜 |
参加者 | 現役生 ・甲斐夏輝(カイ・ナツキ)、European Sport Business School在学(スペイン) ・前川友穂(マエカワ・トモホ)、Columbia University在学(アメリカ) ・濱崎龍洋(ハマサキ・タツヒロ)、George Washington University在学(アメリカ) SPORT GLOBAL事務局 ・辻翔子(FIFPRO)オランダ在住 ・椙山正弘(アジアサッカー連盟)マレーシア在住 ・阿部博一(アジアサッカー連盟)マレーシア在住 ・秋田佑亜 日本在住 ・井村瞭介 日本在住 |
企画の概要説明
SPORT GLOBAL現役生企画は、現在海外の大学院でスポーツ分野について学んでいる3人の日本人現役生に、入学までの経緯、実際の学校の授業、そして日々の生活で気付いたことなどをインタビューしていく企画です。2ヶ月に1回程度の頻度でインタビューをしていき、卒業、そして就職までの道のりをリアルに追いかけていきます。
第3回は、海外大学院に進学する大きなメリットの一つである、多様なバックグラウンドを持つクラスメートについて深掘りしていきます。陽気なメキシコ人弁護士?陶磁器老舗店の御曹司の中国人?父親が元ガンバ大阪の選手だったオランダ人?日本では出会えなかったであろうクラスメートの話に、ワクワクがとまりません。前編、後編に分けてお届けします。
現役生の紹介
- 甲斐夏輝(カイ・ナツキ)さん
- 昨年3月に順天堂大学を卒業し、2021年10月よりバレンシア(スペイン)に渡り、European Sport Business School(ESBS)のMaster in International Sports Managementに入学。現在バレンシア在住。(Twitter: @puyochan_29)
- 前川友穂(マエカワ・トモホ)さん
- 三菱商事での勤務経験を経て、2021年9月よりColumbia University(アメリカ)Master of Science in Sports Managementに入学。現在ニューヨーク在住。(Twitter: @tomihonmimanofu)
- 濱崎龍洋(ハマサキ・タツヒロ)さん
- 住友商事での勤務経験と2年間のメキシコ駐在を経て、2021年8月よりGeorge Washington University(アメリカ)のMaster of Science in Sport Management入学。現在ワシントンDC在住。(Twitter: @TatsuhiroHamas1)
それぞれの大学院のクラスメートのプロフィール(クラスの規模、男女比、海外からの留学生の割合)について
前川友穂さん(Columbia University)
Columbia Universityは一学年80名です。男女比は正確な数字はわかりませんが6:4から7:3程です。アメリカ以外の国籍の学生は17か国で日本人は私のみです。学部卒上がりの学生が割といるので、プログラムの平均年齢は24~25歳と少し若めになっています。学生の職歴はかなり多様性があり、金融、マーケティング、弁護士、会計士、またはベテラン(退役軍人)の学生もいます。特徴的なのは、スポーツ関係のバックグラウンドを持つ学生が少ない事です。スポーツ業界にキャリアチェンジするために必要なスキルやネットワークを身に付けるためにプログラムに参加している学生が大多数です。
前川さんは、大学のアスレティック部門でインターンをされていますが、そこで働いている人達のバックグランドは何か傾向がありますか?
他の部署は分かりませんが、私が所属するBusiness & Finance部門では、当然ながら財務系のバックグラウンドがある人が多いです。若手の同僚が2人いて、1人は学部でファイナンスを専攻し、その後スポーツマネジメント修士を取った上で学生スポーツに携わる為にコロンビア大学に来ています。もう1人は、前職はニューヨーク・メッツに勤務していたそうです。私の上司にあたるCFOは、様々な財務畑のキャリアを歩んできた女性で、スポーツが好きなので大学スポーツに関わる事を選んだみたいです。
17か国から80名のクラスメートの中で、日本人、アジア人は何人ぐらいいますか?
日本人は私のみです。アジアからは、中国人10名程度、シンガポール人1名、インド人2~3名です。あとは一つ上の学年にフィリピン人もいます。アジアからの学生は多くはなく、欧州、中南米からの留学生の方が多いです。
甲斐夏輝さん(European Sport Business School)
European Sport Business Schoolは、学年だと100名程度いますが、自分の所属クラスは22名です。同じプログラムでも、英語、スペイン語で授業するクラスに分かれており、英語で授業するクラスの定員は25名×2、スペイン語で授業するクラスの定員が25名×2で、全体で100名程度という感じです。学年単位よりクラスで動く事が多いです。自分のクラスは女性が7名いますが、学年全体では女性割合は少なく、15名程度です。国籍は、自分の22名のクラスは、17か国から留学生が来ているのでほとんど全員留学生です。日本人は自分1人だけで、アジアからはインド人、スリランカ人、サウジアラビア人の留学生がいます。欧州、カナダなどからの留学生が多いです。学生の平均年齢は23~24歳で、一番下は21歳、上は45歳の学生がいます。自分のクラスは学部卒生が多いですが、リモートでの受講も可能なので、仕事をしながら参加している学生もいて、スリランカ人の同級生は、アイスホッケー関係の会社を経営しながらリモートで授業に参加しています。また、スポーツライブ配信の会社に勤めている同級生もいます。
スペイン人の学生で英語授業のクラスに入っている人はいますか?
自分のクラスには1人います。もう一つの英語のクラスにも1人スペイン人がいて、あとはメキシコ人留学生も、スペイン語を話せますが、敢えて英語のクラスに参加しています。
リモートのクラスは、コロナ禍で始まったプログラムですか?
コロナ禍で始まったどうかは定かではないですが、リモートだけのプログラム(Master in International Sports Management online)も提供していて、学費は現地の学生よりも安かったはずです。現地の学生も、必要に応じてオンラインでの授業参加が認められています。
自分は学部卒で、来年からイギリスの大学院でスポーツビジネスを学ぶ予定ですが、甲斐さんの大学院の学部卒生は、スポーツビジネスを専攻していた人達が多いですか?
学部での専攻は本当にばらばらで、勿論スポーツビジネスやスポーツマネジメントを学んでいた人もいますが、法律であったり、あとはオランダ人の学生はホスピタリティを専攻していた人が何名かいます。スポーツと全く関係ない学問を専攻していた人もいます。
濱崎龍洋さん(George Washington University)
George Washington Universityは一学年16名です。少数精鋭のプログラムなのが特徴です。ただ、クラスという概念がそこまではなく、学生は、学年に関係なく自由に授業を履修していきます。秋入学(15名程度)がメインですが、春入学(10名程度)、夏入学(5名程度)と3回入学のタイミングがあるのも特徴的だと思います。例えば今期受講中のSports Lawでは、修士2年目最後の学期の学生もいます。ですので違う学年の生徒と関わる機会も多いです。基本的に一つの授業の定員は40名です。男女比は6:4程度で、平均24~25歳です。平均年齢が割と低いのは学部卒生が比較的多いからです。特に、中国からの留学生は職歴なしの学部卒が多いです。国籍、人種は、欧米系4:アフリカ系アメリカ人2:留学生4ぐらいです。留学生の中では、中国人とその他の国が3:1といった具合です。中国人以外のアジア(中東含む)からの留学生は、インド、サウジアラビアの学生がいます。日本人は私1人だけです。欧米・中南米からの留学生は、スペイン、メキシコなどから来ています。学生のバックグランドはかなり多様性があり、弁護士、金融関係、アメリカ政府関係、スポーツエージェント、エンジニアなどですね。インド人の留学生は、SAP SE※(1)で働いていて、HONDAにシステムを納める仕事をしていたそうです。変わり種としては、中国の高級陶磁器屋の御曹司がいます。
学部卒生は、スポーツマネジメントを専攻していた学生が多いです。学部でスポーツマネジメントを学び、更に理解を深めるために修士に進む形ですね。職歴のある学生は、スポーツに限らず様々なバックグラウンドがあり、スポーツ界に転職、キャリアアップが目的で来ている学生が多いです。
※(1)SAP SE:ドイツ中西部にあるヴァルドルフに本社を置くヨーロッパ最大級のソフトウェア会社。
SPORT GLOBALのポッドキャストで、アメリカはピカピカのビジネスエリートがスポーツ界に入ってくる、と醍醐辰彦氏が言っていましたが、前川さん、濱崎さんのクラスメートの話を伺っていると、特に職歴のある学生は本当にその傾向がありますね。アメリカは採用基準もスポーツバックグランドに拘りはなく、各分野のトップレベルを雇っている印象です。ヨーロッパも徐々にそうなって来ていますが、アメリカはその傾向が顕著ですね。皆さんのプログラムには、学部卒生が一定数いるとの事ですが、彼らと何かギャップを感じたりしますか?FIFA MASTERでは、23歳の最年少が一番しっかりしていたのを覚えています。年齢はあまり関係ないですか?
特に年齢別に分かれてはいませんが、学部卒で20代前半の若々しい学生と、30代前後の学生では生活リズムが違うと思うので、一緒にいるメンバーは自然と年齢に近い括りになっているかもしれません。実際、私の場合、30+Clubというグループを作り、30歳前後メンバーで頻繁に集まっています。Columbia Universityのプログラムは、元々学部卒上がりの学生はそこまで多くなかったのですが、コロナ禍で就職が難しかった事も影響して、大学院進学を選択した学生が多いようです。ただ、授業でビジネスのディスカッションするためには職務経験はマストだと思うので、そこのバランスは一定程度必要ではないかと、大学側にフィードバックをしています。
前川さんが言っていたように、年齢を気にしている訳ではないのですが、年が近い人達が自然に集まる傾向はありますね。George Washington University は、30歳以上の学生があまりいないので、自分は20代後半の学生と一緒にいる事が多いです。Columbia Universityと同様に、以前は学部卒生の数は今よりは多くなかったようですが、コロナ禍の影響で数が増えているのが現状です。学部卒生が悪いという訳ではないですが、アサイメントのアウトプットの質には差があると感じます。もともと、ビジネススクールに紐づいているプログラムなので、一定の職歴がある人達がキャリアチェンジを目的に学ぶのが本来の姿だと思います。
中国人留学生が多いのは、アメリカの大学が経営戦略的にやっている部分もあるのかなと思いますが、その辺りどうですか?
George Washington Universityは全米でトップレベルに学費が高いので、学生数を担保するという面で、恣意的に中国人留学生を受け入れているのはあると思います。なので、中国人留学生は裕福な人達が多いですね。一方で、大学全体としては、全米有数の多様性を誇る大学なので、様々な国の留学生がいて、コネクションをつくる機会はたくさんあります。プログラムによっては、アメリカ人がマイノリティのところもあるぐらいです。あとは中国人学生とその他出身者の間に少し隔たりを感じます。(私のクラスにいる)中国人学生は仲間で固まる傾向があるので、そこは少し残念です。勿論中国人留学生にもスポーツに熱い気持ちを持っている人はいて、例えば、バスケットボールでNBAを超えたい!と言っている学生もいます。当たり前ですが私は国籍問わず、彼らの良い部分を全て吸収したいというスタンスでいきたいと思っています。
現役生企画シーズン1の岡山駿氏が、エディンバラ大学は中国人留学生が8割いると言ってましたが、実際アジアマーケットを考える時、中国とインドは外せない国だから、彼らとのコネクションをつくっておくのは重要だと思います。中国は国策でスポーツを推し進めているから、そこに資本がある若者が入ってきているのは、スポーツ界にとって確実にプラスな事だと思います。
留学生の人数は、その国のスポーツビジネスに対する本気度を測る一つのインディケーターだと考えます。語弊を恐れず言えば、日本のスポーツビジネスは、まだアメリカのように一線級の優秀な人材が集まる業界ではないと思っています。就職人気ランキングなどを見てもスポーツ関連企業はランクインしない。一方で、例えば中国は、アメリカに留学してまでスポーツマネジメント、ビジネスを学ぼうとしている20代~30代の若者が多数いるのを端から見ていると(人口の母数の違いもありますが)、今後の中国スポーツ市場は更に発展していくのだろうなと感じざるを得ません。
--- 前編はここまで ---
SPORT GLOBALからクロージング
第3回の前編は、それぞれの大学院のクラスメートの構成について伺いました。今後大学院留学を考えている方にとって少しでも参考になりましたら嬉しいです!後編では、大学院で出来たマブダチ、キャラクターが際立つクラスメートについて伺っていきたいと思います。
現役生企画シーズン2の3回目のインタビュー、いかがでしたか?今後も定期的にインタビューを発信して参りますので、今後取り上げてほしいテーマや現役生に聞いてほしい質問などありましたら、こちらのお問い合わせフォーム、またはinfo@sportglobal.jpにメールをお送りください。