日時2024年5月18日(土)日本時間21時〜22時半
参加者現役生
・伊藤慎平(イトウ・シンペイ)
筑波大学→高校教員→FIMBA(University of Liverpool MBA Football Industries)
・杉田響(スギタ・ヒビキ)
青山学院大学(中退)→ University of Arkansas(アメリカ)→ Loughborough University(イギリス)
・水口珠莉 (ミナクチ・ジュリ)
University of Sussex (イギリス) → The Football Business Academy(スイス) 

SPORT GLOBAL事務局
・辻翔子(FIFPRO)オランダ在住
・椙山正弘(アジアサッカー連盟)マレーシア在住
・阿部博一(アジアサッカー連盟)マレーシア在住

企画の概要説明

SPORT GLOBAL現役生企画は、現在海外の大学院でスポーツ分野について学んでいる日本人に、入学までの経緯、大学院の授業、同級生について、そして日々の生活で気付いたことなどをインタビューしていく企画です。2ヶ月に1回程度の頻度でインタビューをしていき、卒業、そして就職までの道のりをリアルに追いかけていきます。

2020年にSPORT GLOBALのメインプロジェクトとして始まった現役生企画も今年でシーズン4に突入。これまで日本もしくは海外学部卒→大学院、就業→大学院など様々なキャリアを持つゲストに参加して頂き、イギリス、スペイン、アメリカ、フランスなど、複数国のスポーツマネジメント系の大学院プログラムを紹介して来ました。

シーズン4も、バラエティに富んだバックグランドを持つメンバーが集まってくれました。彼らの経験を余すところなくシェアしていきたいと思います。それではシーズン4の第1回をお楽しみください。

※本文では大学名は以下の訳語を使います。

University of Liverpool MBA Football Industries→FIMBA
Loughborough University→ラフバラ大学
The Football Business Academy→FBA
University of Arkansas→アーカンソー大学
University of Sussex→サセックス大学
The University of Edinburgh→エディンバラ大学
Birkbeck, University of London→バークベック

留学のきっかけ

登場人物A伊藤慎平さん

留学前は保健体育の教員として10年以上仕事をしていました。もともとサッカー指導に携わりたくて教員という道を選びました。仕事をしていくうちに、教員として求められるものと、自分がやりたいことのギャップに気がつきましたが、当初は自分の中で折り合いをつけて教員を続けていました。しかし、時間が経てば経つほど自分の中での矛盾が大きくなっていき、サッカーの仕事をしたいと強く思うようになりました。自分の年齢や経験を踏まえると、サッカー界に転職するためには、何か武器となる特徴が欲しいと思いました。元々海外サッカーが好きだったというのもあり、留学してスポーツマネジメントを学ぶという結論に至りました。

登場人物A杉田響さん

実は今回留学するのは2回目になります。日本の大学に進学しましたが、大学3年生の時にコロナの影響で交換留学ができなくなりました。どうしても諦めきれずに日本の大学を中退して、アメリカのアーカンソー大学に入学し、そこで2年間過ごしました。その卒業後にラフバラ大学の大学院プログラムに入学します。もともと海外に興味を持ったきっかけは、小学校4年生の時に、ルクセンブルクに2年半の生活を経験したのが大きかったと思います。色んな国のとの交流が楽しかったです。英語は挨拶もできるかどうかぐらいのレベルでしたが、小さい頃からサッカーをしていたので、サッカーをすることで仲間ができました。大学院留学をイギリスに決めた理由は、もともと国際開発に興味があり、スポーツと開発を学べるプログラムはイギリスの方が、アメリカよりも多いので、イギリスが留学先になりました。アメリカだとスポーツを大学院で勉強する場合、スポーツビジネスがメインテーマになることが多いと思います。

登場人物A水口珠莉さん

母がタイ人で、生まれてから6年間はタイで過ごしました。なので子供の頃から海外を意識する環境にいたので、いずれは海外で仕事をしたいというマインドを持っていたと思います。高校2年生の時にオーストラリアに留学する機会があり、1年間留学しました。高校卒業後には、イギリスの大学に留学します。学部では、国際関係学を勉強しました。大学卒業後、すぐにFBAに入学しました。小さい頃から高校まで野球をしていたので、サッカーにはあまり関わりがなかったのですが、大学在学中に女子サッカーに関わる機会があり、女子サッカーに目覚めFBAへの進学を決めました。

大学院留学を決意したタイミング

登場人物A水口珠莉さん

高校でオーストラリアに留学後、国際舞台でのキャリアを真剣に考え始めました。その頃には日本の大学に留学することは選択肢から外れており、留学フェスなどに行って学校選びを進めていました。通っていた高校は英語ネイティブの先生が多くいて、ある先生から、「イギリスは国際関係学がすごく有名だよ」と薦められて、イギリスに留学を決めました。
サセックス大学に入学し、国際関係学を勉強しました。サセックス大学は大きな特徴が2つあります。①国際関係学、国際開発学で世界一のプログラム、②国指定の公園の中にキャンパスがある。サセックス大学からFBAへの進学ですが、それまではスポーツビジネスは男性がやるものという先入観があったのですが、たまたま寮の近くがブライトンのアメックススタジアムがあるところで、スタジアムを訪れた時に関係者に「女子スポーツすごく盛り上がっているから、チャレンジするなら今だと」と言われて、一念発起しました。

登場人物A杉田響さん

大学院でスポーツマネジメントを学びたいと思ったのは、大学卒業がせまってからでした。2022年9月に大学院進学を決意して、2022年12月には出願しました。3ヶ月ぐらいで大学院選び、パーソナルステートメント、あとはTOEFLも受けました。アメリカの大学院にいく場合は英語力の証明は必要ないのですが、イギリスの大学院の場合はルールが若干違って、日本人は英語テストのスコアを提出が必要でした。正直大学の授業が忙しく、TOEFLを勉強する時間はあまりなかったのですが、目標とする得点を取ることができました。

登場人物A伊藤慎平さん

2021年秋ぐらいから留学を考え始めました。当初はサッカーの指導者で留学を模索していましたが、色々考えるうちに指導者ではなくスポーツマネジメントを勉強したいと思うようになりました。情報収集している過程でSPORT GLOBALの記事をみつけて相談しました。その後、2022年から本格的に勉強を始めました。1年間苦しかったです。2022年の年末にようやく要件を満たす得点を取れました。言語交換アプリで知り合ったオーストラリア人に1年間家にホームステイして貰いました。IELTSのスピーキングを一緒に練習してくれたり、勉強の手助けをしてくれました。

大学院留学の準備のプロセス

登場人物A杉田響さん

ラフバラ大学のプログラムは、推薦状の提出、英語テストの結果、パーソナルステートメントという一般的に必要な書類の提出が必要でした。自分はパーソナルステートメントにフォーカスして準備を進めました。特に何故自分がラフバラ大学に入学すべき人材なのかを重点的にアピールしました。2022年12月に出願し、ラフバラ大学はすぐに合格通知が来ました。他にはエディンバラ大学にも願書を出していましたが、こちらは少し時間が経って3月終わり頃に合格通知が来ました。合格した2つの大学のうち、ラフバラ大学を選択した理由は:
①ラフバラ大学はスポーツ界で世界的に有名な大学であること。スポーツの各分野の第一人者の教授が多い。
②ウェブサイトから判断して、就活に力を入れている大学だと思った。
③校風が自分に合う気がした。エディンバラ大学は歴史があり伝統的なイメージ。ラフバラはわりと新しい大学と校風。
一番の軸は、どれだけ自分が学びたい事を深く学べるかを重要視しました。地理的な要素では、エディンバラのスコットランドアクセントに関しては少し考慮しました。

登場人物A水口珠莉さん

イギリスの大学を卒業していたので、英語力を証明する必要はなかったです。書類はパーソナルステートメント、レジュメを提出しました。それに加えて面接2回しました。当初はマドリードの大学も候補に入れていましたが、マドリードで生活するのは費用がかなりかかるのが懸念でした。FBAはオンラインとオンサイトのミックスで、就活率も高く、著名な教授陣もいて、またパートナークラブも魅力的だったので、最終的にはFBAに応募を決めました。面接はすごい緊張しましたね。もともと緊張しやすいので、LinkedInでFBAの在校生にメッセージを送り、返信してくれた人に練習の面接をして貰いました。
面接の一回目は、基本的な質問、自己紹介がほとんどと聞いていましたが「マンチェスターユナイテッドの経営はこれからどうなると思う?」という質問を受けました。一瞬頭が真っ白になりましたが、女子サッカーのことは知識があったので男子サッカーのことはわからないと前置きした上で「女子のチームは2019年に設立されて、アメリカから知名度の高い選手を連れてきたことにより盛り上がりをみせており、男子よりも女子のユニフォームが売れたという結果も出ているので、今後女子チームの経営は伸びると思う。」と答えました。
二回目の面接は、「今現在自分が苦労していることは何か?」、「自分を一言でいうと?」、「親友は誰か?その親友はあなたのことをどう表現するか?」などの質問を受けました。自分を客観視する力を試されていたのだと思います。

登場人物A伊藤慎平さん

FIMBAの他に、バークベック、ラフバラ大学のプログラムにも出願しましたが、その2つの大学はミッションステートメントと推薦証3つ、IELTSの英語力を証明する書類が必要でした。FIMBAはそれに加えてCV、職歴証明が必要でした。FIMBA出願には基本的には3年以上の職歴が必要です。特に面接などはなく、書類だけの選考でした。FIMBAに決める過程で、SPORT GLOBALのネットワークで当時のFIMBAの在校生だった重田さん、ラフバラ大学の在校生であった井村さん、バークベックの細谷さんを紹介してもらいました。最終的にFIMBAに決めた理由は3つあります。
①サッカーに特化していた。
②MBAという分野が馴染みがなかったので、新たな事を学べると思った。
③職歴が必要なので年齢層が同じぐらい、且つ、色々な職歴の人達から学べると思った。
バークベックとラフバラ大学からは、3月に出願して3月中に合格通知が来ていました。FIMBAは3月に出願し7月に合格通知が来たので、当初はバークベックとラフバラ大学の2つで悩んでいました。もしこの2つの選択肢ならば、ラフバラ大学に進学しようと思っていました。ラフバラ大学はスポーツ界で名が通っており、自分の大学の先輩もラフバラ大学に行っている人たちがいたのが理由です。

費用をどう工面したか

登場人物A水口珠莉さん

FBAは、イギリスにある「Women in Football」という団体とパートナーシップを組んでいて、この団体が女子学生に向けて奨学金を出しており、その奨学金を受給しています。卒業後に半分を返す必要がある奨学金ですが、最長10年かけて返すことが出来ます。奨学金返金の期間はフレキシブルで、自分は面接の時に3年かけて返すプランを提示しました。FBAはスイスに拠点があるので学費がわりと高く、最後の学期はポルトガルにあるビジネススクールで受けるので、そこでの出費もあります。学費が半分で済むのはかなり助かりました。また、親も留学の支援をしてくれています。この奨学金のおかげか、自分の年は女子学生が3人しかいませんでしたが、その翌年は女子学生が8人いました。女性だからという理由でスポーツビジネスに入りにくいと思っている人の背中を押してくれる奨学金制度だと思います。

登場人物A杉田響さん

アメリカにいた時も、今のイギリスの留学も、授業料と生活費は親に支援して貰っています。アメリカ留学の時は、アーカンソー州の大学に通っていましたが、州内の学生は年間およそ100万円ぐらいの学費で、州外から来ている学生はその倍ぐらいの学費を支払う必要がありますが、自分は州内の学生と同じ学費で済む奨学金をもらっていました。大学院の進学を決めた後、日本の財団が出している奨学金等に申し込もうとしましたが、大学院進学を決めたのが卒業間近だったこともあり、奨学金の受付は終わっていました。ラフバラ大学に受かった後に、大学側に奨学金の有無を確認しましたが、イギリスの大学は発展途上国から来た学生には奨学金がありますが、日本人学生を対象とした奨学金はありませんでした。

登場人物A伊藤慎平さん

最終的には貯金と親にもお金を借りました。留学できる英語力を身につける必要があったので、取り敢えず英語の勉強を始めたので、奨学金の情報を最初から収集するということはしませんでした。進学が決まった後に少し調べましたが、年齢制限がある奨学金も多かったです。FIMBAの外国人学生はほとんど実費で留学してきていると思います。イギリス人学生は4人いましたが、彼らはSKY Sportsから全額奨学金をもらっていました。SKYはアフリカ系、東南アジア系などのマイノリティのイギリス人に対して奨学金を出しているようです。

オンラインコースの可能性

登場人物A水口珠莉さん

オンラインとオンサイトのハイブリットコースでしたが、ポルトガルに行った時に、やはりFace-to-Faceに勝るものはないと実感しました。オンライン授業のクオリティは高く、興味のあるトピックもカバーされており、満足ですが。質問するのが難しかったり、時差の対応が大変でした。朝の3~4時に授業があることがありました。あと、Zoomだとグループディスカッションが大変でした。実際にポルトガルで同級生に会ってディスカッションをしてみると、顔を見てわかる事も多いなと思いました。ただ、費用に関して悩んでいる人がいるならハイブリットプログラムは良いオプションだと思います。

SPORT GLOBALからクロージング

登場人物BSG事務局

シーズン4の第1回は、大学院の進学先の選定、留学準備、留学費用の工面など、参考になるお話をたくさん聞くことが出来ました。第2回以降もお楽しみに!

今後も定期的にインタビューを発信して参りますので、今後取り上げてほしいテーマや現役生に聞いてほしい質問などありましたら、こちらのお問い合わせフォーム、またはinfo@sportglobal.jpにメールをお送りください。

また海外の大学・大学院でスポーツを学んでおり、現役生企画に参加いただける方も随時募集中です。ご連絡お待ちしています。

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