幼少期をオランダで過ごし、高校時代にはインドネシアで1年間のサッカー留学を経験。筑波大学に入学後は蹴球部に所属し、4年次には休学してアフリカのザンビアで、卒業後はガーナでプロサッカー選手としてのキャリアを歩んだという異色の経歴を持つ森下仁道さん。今回のインタビューでは、筑波大学蹴球部での経験のほか、キャリアに対する考え方も伺いました。

蹴球部時代の経験は今にどう繋がっているのか、そして今もなお独自の道を拓きつづける仁道さんが大切にしてきたものとは。高校時代以前の話やアフリカでの活動や経験に関する詳細は、仁道さんの公式HPや各種SNSも是非併せてご覧ください。

それでは「体育会×キャリア×海外」企画第5回スタートです!

森下仁道さんのプロフィール

森下 仁道(もりした・じんどう)
1995年生まれ。岡山県倉敷市出身。
幼少期を過ごしたオランダでサッカーに出逢い、高校時代にはインドネシアへのサッカー留学を経験。
筑波大学へ進学し、蹴球部に所属。在学中にアフリカでプロサッカー選手になることを決意し、ザンビアでプロ契約を勝ち取り、卒業後はガーナでもプレー。プロサッカー選手としてのみならず、アフリカを主な舞台として様々なフィールドで活動している。

森下仁道さんの詳細情報や各種SNSは以下のリンクからどうぞ!

・森下仁道公式HP:https://jindo-morishita.com/
森下仁道を応援する会https://community.camp-fire.jp/projects/view/457671
・X:https://mobile.twitter.com/SoccerJindo
・Instagram:https://www.instagram.com/storyofjindo/

インタビューQ&A(筑波大学蹴球部時代)

初めに大学時代の話からお伺いしたいのですが、筑波大学蹴球部時代の4年間は仁道さんにとってどのようなものでしたか?

トップチームに食い込み、プロになることだけを目指してサッカーに没頭した4年間でした。
筑波大学蹴球部は大学サッカー界において日本トップレベルの組織ですが、セレクションがありません。ですので来るもの拒まず、去るもの追わずのスタンスで、高校時代の実績や学部に関係なく所属することができます。そのような様々なバックグラウンドを持った部員で構成されている組織ですが、「大学サッカーを牽引する」ことを蹴球部のヴィジョンとして掲げ、そのヴィジョンのもと全ての部員が活動しているため、「良い組織にしていこう」ひいては「日本サッカーを牽引していく存在になるためにはどうしたらいいだろう」ということを本気で考えている学生が多いです。

僕は中学2年の頃に、いずれは筑波大学蹴球部でプレーすると決めていました。大学の募集要項を確認してみたところ、 蹴球部員の大半が所属する体育専門学群に推薦で入るには、高校の全国大会でベスト16 以上に入る、または世代別の代表に選ばれるなどの輝かしい実績が必要であるということを知りました。サッカー推薦の基準をクリアするよりも学力で勝負する方が可能性が高いと考えたため、勉強にも力を入れていました。
高校時代に1年間休学してインドネシアへサッカー留学に行き、帰ってきたときに担任の先生と進路について話しました。「体育の先生になるのが目的ではないなら、体育専門学群ではなく、インターナショナルなバックグラウンドを活かして、国際総合学類を推薦で受けてみたら」というアドバイスに影響を受け、後者の推薦入試を経て筑波大学に入学し、蹴球部に入部しました。蹴球部は全体で160人前後の大所帯で、当時は、1軍から7軍まであり、僕は最初は6軍に配属されました。


(筑波大学蹴球部で活躍する仁道さん)

筑波大学蹴球部の特徴として、サッカーにはもちろん全力で取り組みますが、局活動という部の運営や発展に不可欠な業務を部員で分担して行うプレー以外での活動もあり、必ずいずれかの局に所属する必要があります。また、大半の部員は大学の講義を通じてC級コーチングライセンスを取得し、週末に地域のサッカー少年団で指導をすることで、選手としてだけではなく、指導者としての知見や経験も深めていくことができる環境があります。

(大学周辺地域のサッカー少年団で指導する仁道さん)

最初の1、2年生は、蹴球部がどのような組織なのかということや、組織文化を先輩方から学んでいきましたが、徐々に「この組織にどのように自分らしく貢献できるだろう」という視点で考え始めるようになっていきました。そのようなきっかけをくれたのは同期だったのですが、それぞれ就職活動や「海外でサッカーがしたい」、「海外で指導者をやりたい」といった英語の勉強の目的があり、「仁道は帰国子女で英語を喋ることができるので英語学習の相談に行こう」という形で相談に乗る機会が増えていきました。
筑波大学にTIASという修士課程のグローバルプログラムがあり、僕はTIASの世界中から集まる学生たちとよく交流していました。彼らも体育会の学生と交流がしたいというニーズがあったので、これをマッチングさせようというアイデアが生まれ、 蹴球部内に「グローバルチーム」という団体を創りました。そこでは、両者を集めてスポーツイベントを開いたり、ランゲージエクスチェンジなどでお互いの言語を学んだり、交流会を開いて様々な国の文化を知ってもらったりするところからスタートしました。

(蹴球部のグローバルチームでの集合写真)

また、エージェントなど、海外にチャレンジしたい部員をサポートすることも行っていたのですが、それ以降在学中や卒業後に海外へ行く人が増えて、それぞれのフィールドで活躍してくれています。そのような流れを作ることができたのでグローバルチームを立ち上げてよかったと思いますし、僕だからこそできたことだと思います。
他には、僕は直接的に関わってはいないのですが、「プロモーションチーム」がちょうどその時期に立ち上がり、地域の民間企業を巻き込んでチームにスポンサーをつけよう、地域に応援されるチーム作りをしようということを、筑波大学蹴球部が大学サッカーにおいて先陣を切って進めました。こうした学生生活での小さな成功体験の積み重ねが、今プロサッカー選手として活動することができている礎になっていると思います。

(筑波大学蹴球部での試合前のチーム集合写真)

筑波大学蹴球部で得ることができたものは何でしょうか?

数えきれないほどありますが、あえて1つ挙げるとすると、「社会に対して貢献の仕方のヒント」を得ることができたことだと思っています。ピッチ上の話ももちろん大事ですが、大学サッカーにおいては、ただ単にプレーをするだけではなく、それ以外のところでもどのように自分の存在価値を発揮していくのか、どのように周りを巻き込みながら組織や社会にインパクトを残すのかというところも大切だと考えています。

体育会という組織は良い意味でも悪い意味でも閉鎖的な集団で、外部を寄せ付けない尖った印象を与えてしまうこともありますが、結局サッカー選手・サッカーチームは応援されることで成り立っていますし、応援される集団になっていくためにも開放的な組織になる必要があるという課題を当時感じていました。そうした課題に対してどのようにアプローチしたら良いかということを考えていった結果、社会との接点を作る必要性を感じて行動に移し、成功体験を積み重ねることができました。こうした一連の経験は貴重な経験だったと思っています。

蹴球部で得たものをどのように卒業後のキャリアに活かすことができましたか?

僕は大学で得たものを直接的に活かしているキャリアであると思っています。まだ卒業して5、6年ですが、 ここまで大学のリソースを今でも使わさせていただいている卒業生も珍しいのではないかと思うので、筑波大学に恩を感じています。

例を挙げると、大学4年次に目標であったJリーグクラブからオファーをいただくことができなかったのですが、プロサッカー選手になるにはトライアウトへ参加する必要がありました。日本人がいないということに加えてサッカーのレベルが高い地域でプレーしたいと考え、アフリカか中東に絞りました。当時は大学の国際総合学類の研究室で文化人類学について学びながら、体育専門学群の方の研究室にも入っていて、「アフリカにおけるスポーツを通じた国際開発」というテーマで研究をしていました。ある日、体育分野の研究室の先生がザンビアで開かれるスポーツの国際学会にお招きされたということを聞き、お願いして帯同させていただきました。そうして渡航したザンビアでの繋がりからプロ契約に至ったのですが、ここでのきっかけは大学の研究室の教授です。

その後はガーナでプロサッカー選手としてプレーすることになったのですが、この背景としては、ザンビアでのプレーが終わった後、TIASで出会ったガーナ人留学生との繋がりでガーナへ1カ月ほど行っていたことがきっかけです。このように、繋がりやご縁を辿っていったら想像もつかなかった選択肢が出てきたという感覚です。大学の様々なリソースをフルに活用させていただいて今の僕があるということは間違いないことですし、考え方も含めて大学で培ったものは今に大きく活きています。

先ほどスポンサーの話をしましたが、どうすればスポンサーの方々にご支援をいただけるのか、スポンサーの方々に対してどのようなメリットを提示することができるのかというところも、 そこで活動してた先輩から様々なアドバイスをいただいて動いた結果、現在ありがたいことにおよそ20社のスポンサーの方々にご支援をいただいています。また、さきほど触れたグローバルチームでの活動に協力してくれた留学生たちが、今は僕が運営しているオンライン英会話スクールの講師をやってくれたり、事業を手伝ってくれているので、全てにおいて大学のものが延長線上にあるという感覚です。

 (後編に続く)

編集後記

体育会×キャリア×海外企画 第5回 森下仁道さん【前編】、いかがでしたか?今後取り上げてほしいテーマや聞いてほしい質問などありましたら、こちらのお問い合わせフォーム、またはinfo@sportglobal.jpにメールをお送りください。

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