プロフィール

・1983年千葉県生まれ
・現在地:ファエンツァ(イタリア)
・現職:スポンサーシップキーアカウントマネージャー(アルファタウリ)
・海外在住歴:13年(イギリス10年、スペイン1年7ヶ月、イタリア1年)

学生時代

英語嫌いの日本人。初めて訪れたヨーロッパの自由な空気に感化され、嫌いな英語をなんとか頑張ることを決意。日本の大学卒業後、一年間ロンドンへ遊学。帰国後、航空会社へ就職するも、ロンドン在住の友人の「戻っておいで」の言葉に触発され再び渡英。それからはそのままどっぷり海外生活に浸かり、アルバイトをしながらそのまま大学院進学、二年間のポストスタディーワークビザを取得。海外就職への道へ。

海外就職①:マンチェスター・ユナイテッド

たまたま見つけた「プレミアリーグトップチーム勤務の日本人ネイティブスピーカー募集」の求人に応募、運よくマンチェスターユナイテッドで二週間限定のインターン生として勤務を始める。二週間が一か月、一か月が三か月と会社の都合よく契約が延長されるものの、将来の不安定さは変わらず心配になり、他の仕事を見つけるべく面接に行く。ロンドンのリサーチ会社から「ぜひうちで働いてほしい。」と熱烈歓迎を受けるも、「明日今の仕事を辞めて明日からうちで働いて!なんでよ、どうせインターンなんだからいつ辞めたって一緒でしょ!」という異常なまでの強引さが気になり、オファーを辞退。不安定を承知でそのままマンチェスターユナイテッドで働くことを決意し、結局半年後にユナイテッドから正式な雇用を勝ち取る。仕事内容はスポンサーシップセールスのサポート。最初のころは日本企業へのターゲティングなどの基礎的な部分での業務が中心だったが、いつの間にか翻訳や通訳業務から商談のサポートまで色々な業務をサポートするようになった。

海外就職②:リバプールFC

インターンスタートから数えて一年以上が過ぎたころ、ユナイテッドの正式な社員となったもののモチベーションの低下とともに、会社側から今私が受け持っている仕事をアジアオフィスに移行させると言われ、ユナイテッドから事実上の解雇を告げられた。その後はサッカーとは関係のない仕事をしようと就職活動をするも苦戦。前職でやり残したこと、納得がいかなかったことを思い出し、やっぱりサッカー関係の仕事をしようとイギリスのサッカークラブに絞って就職活動を行ったところ、リバプールFCに就職が決まった。ここでは二年をリバプール、残りの一年をロンドンオフィスで勤務した。リバプールでは日本のみならずアジアやアメリカなど自分の担当する領域が広がったこと、また実際に商談をセッティングするなど様々なことを体験した。スポンサーセールスに関わる中で、各スポンサーが実際に提携を始めてから、どうやって獲得した権利を最大利用するかといったアクティベーションの部分に興味を持つようになる。また普段から「外国人社員=本国の社員の業務のサポート役」というあくまでも助っ人的な立場であることに違和感を感じていたことから、自分自身もっと上に行きたいという欲が出てきてしまい、一度キャリアを中断してイギリスを去り、新たな場所で再スタートを切ることを決意し退職した。

海外留学①:レアル・マドリードMBA

イギリス在住時に旅行で訪れたスペインを気に入り、仕事を辞めてぜひスペインに住みたいとはずっと考えていたけれど、語学留学だけでは物足りないような気がして、スポーツビジネスMBAを考えた。バルセロナの学校にしようかと考えていたけれど、ひょんな事から当時FIFAマスターに通っていた辻翔子さんに出逢い、「スペインを感じたいならマドリッド!」との言葉をもらい、直感でマドリードに決定。確かにバルセロナはカタルーニャ独特の文化があり、それはそれで素晴らしいのだけど、真のスペイン文化を感じるにはマドリードの方が適していると思う。そんな流れであれよという間にレアルマドリード大学院への入学が決定。授業は英語で行われたものの、それ以外の生活の部分では全てスペイン語なので、結構苦労した。ただ私の場合、長いイギリス生活で、英語ではそれほど生活に困らない状態になっていたため、言葉がわからずに毎日奮闘していた渡英当初を思い出し、初心に帰る良い機会となった。自分が英語圏以外で生活するとは思ってもみなかったけれど、これもまた良い経験。大学院のオリエンテーションでは、ダイレクターが「あなた達はスペインにいるのだから、素晴らしい言語であるスペイン語を話しましょう。英語しか話せない人をアメリカ人と言います!」とブラックジョークをかましていたのを見て衝撃を受けたが、これが自分にとって自信を取り戻すいいきっかけとなった。というのも、当時の私はイギリスの会社で働いていた関係で、英語と日本語を駆使して仕事をしている事実よりも、英語が現地のイギリス人より劣っている自分に落胆していたし、実際に英語こそ世界の中心言語、英語が出来ない人間は使えないという上から目線の英国人たちに辟易していた。スペインに来て、自国の言語を誇りに思うこと、完璧を目指さなくていいことを学びとても気がラクになった。また、場所がスペインだけに南米の繋がりも強い。南米からのビジネスパーソンがスペインやアメリカで事業を展開する事例を見て、今までイギリスにいた自分には想像できなかったビジネスや事業展開がたくさん存在することを学んだ。
このコースはMBAの授業なのでとにかく実践的なことが多い。ビジネス理論を教える大学教授よりも実際のビジネスシーンで活躍している人が講師に招かれることが多かった。イギリスで二つのサッカーチームで働き、スポンサーシップセールスの仕事しか知らなかった私にとって、会計やマーチャンダイズ、チケッティング、またプレミアリーグ以外のスポーツビジネスなど、スポーツを広範囲に渡って見てみることがこのコ―スを選んだ目的でもあったので、自分には合っていたと思う。とある教授に「なぜ、ビックサッカークラブを辞めて、スペインの大学院に来たの?」と質問をされたときのこと。「ビックなチームだろうけど、ただそこにただいるだけな気がして退屈だったから。」という私の一見ひねくれた答えに、「おめでとう!コンフォートゾーンを自らぶち壊したんだね!」というリアクションをされ、心底ここに来て正解だったと思った。
中にはもっと理論的な授業内容や論文などの課題を望んでいた生徒もいたが、そもそもMBAは経営学修士号。マーケティングや会計学、人事など、経営に必要な知識を幅広く学ぶものであるため、一つひとつの科目をより深く学ぶにはMBAよりも自分の専門分野に特化した修士号取得を目指した方がいいと思う。残念な部分といえば、レアルマドリードの名前がコースにあるため、卒業後はレアルマドリードに就職できると思っている生徒がいたこと。このコースはレアルで就職するためのコースではなく、スポーツ業界でステップアップするため、また、スポーツを使ったビジネスを起業するための知識をつけることが主な目的である。レアルが好きだから、だけでは意味がない。このコースを受けた上で何をしたいのか、どこを目指しているのかを考えてコースを決めた方がいいと思う。

海外就職③:アルファタウリ(F1)

スペインの大学院に入学した頃から、自分の中で、「様々な国籍の人たちがいる職場」、「スポーツマーケティング、スポンサーシップアクティベーションに関わる仕事(セールスではない)」という条件にこだわりチャンスを待っていたところ、運よくイタリアをベースとするF1チームからLinkedIn経由で直接声をかけてもらった。Skypeでの面接、実際にオフィスを訪問しての最終面接を経て、採用が決まる。イタリアのビザを取得するため数か月日本で待機をしなければいけなかったものの、会社のサポートもありビザをすんなりと取得。2019年の9月、アジアラウンドからチームに帯同し、現場でのゲストや見込み客の対応に当たる。それと同時にレース以外でも既存スポンサーへのアクティベーションの企画提案、スポンサーイベントやコンテンツ制作のサポート、契約更新のサポートなど、幅広い業務をさせてもらっている。また、イギリスのサッカーチームでの経験を生かし、スポンサーセールスチームへのアドバイスやサポートなども行っている。

海外進出して良かったこと

様々な文化を体験できたこと、英語をやらなければならない場所に無理やり置かれたことで、英語を習得できたこと。他のヨーロッパの言語を学ぶきっかけができたこと。

海外進出して苦労したこと

やはり英語力。自分は語学学校の下の方のクラスからのスタートだったため、本当に悔しい思いをたくさんした。発音もヘタで何度もバカにされたり笑われたりした。自分と同じような思いをする人が少しでも減るよう、いつか英語を勉強している人をサポート出来たらと思う。また、日本国籍の人がヨーロッパで働く上で一番の問題はビザ。面接でうまくいってもビザを出してくれる会社でないと就職は不可能。私はイギリス時代は学生ビザからのスタートで、パートタイムでしか働けないという法律があり、アルバイトでさえ仕事を見つけるのに苦労した。実際に飲食チェーンで仕事を見つけても、自分より英語ができない人や学位を持っていないEU圏の国籍保持者が、フルタイムで働いているというだけで昇給の機会があることにフラストレーションが溜まった。
イギリスで学位をとったため、当時存在した2年間合法的に働くことができるポストスタディワークビザを取得したものの、そのビザの有効期限が切れる直前にユナイテッドを退職したため、その後の就職活動は非常に苦労した。ビザが最低でも6か月以上は残っていないと門前払いの会社も多かったし、それ以上に永住権持ちの人しか募集していない会社、永住権がないとエージェントに登録さえさせてもらえない状態だった。本当にギリギリの所で次の仕事が見つかりビザ問題も解消されて助かった。
今の会社では全てを親身になってサポートをしてくれたのもあり、ビザの取得が非常にスムーズだった。イギリスとドイツ以外での労働ビザの取得やそもそも就職自体がかなり大変と聞いていた、というか思い込んでいたので、今自分がイタリアの会社で働いていることが非常に不思議である。チャンスはどこに転がっているのかわからないし、人生どうなるかなんて全くわからないと本当に思った。

後輩たちへのアドバイス

サッカー業界、スポーツ業界に興味を持っている人はたくさんいるけれど、実際どんなことをしたいのか、自分のスキルと経験をどこでどう生かしたいのかまで考えている人は少ない印象を受ける。ぼんやりと海外のサッカークラブで働いてみたい、営業やマーケティングをやりたいだけでは海外就職を目指す上で不十分。また日本人に限らず、面接でそのスポーツが好きなこと、ファンであることを延々と話してしまう候補者も多々いるようだが、それは一番敬遠されるので注意が必要。
海外で働きたいのであれば自分は外国人であることを常に意識し、外国人である自分が本国の人間より勝る部分はどこなのか、わざわざ外国人である自分を雇う利点は何なのかを十分に考え、就職先のターゲットを絞り込む必要がある。

好きな言葉

It’s my life and I’m the one who has to live it.

Charles M. Schulz

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