Times Higher Educationが発表しているランキングなど、一般的な世界の大学ランキングはいくつかあるが、スポーツビジネスに特化した大学ランキングは数多くない。そんな中、SportBusiness*はSportBusiness Review**を通じて「スポーツビジネス大学院ランキング(SportBusiness Postgraduate Course Rankings)」を毎年発表している。SPORT GLOBALでは、2020年から継続して本ランキングを分析した記事を掲載している。スポーツビジネス、マネジメント分野での海外大学院留学の参考にして欲しい。また、ランキングの評価基準が気になる人は、先に【ランキングの評価基準】を確認してから【2022年ランキング】に進んで欲しい。

(2020年、2021年のランキングはこちらをご参照ください)
2020年ランキング:2020年度スポーツビジネス大学院ランキング(SportBusiness Postgraduate Rankings) | SPORT GLOBAL
2021年ランキング:2021年度スポーツビジネス大学院ランキング(SportBusiness Postgraduate Rankings) | SPORT GLOBAL

2022年ランキング

2022年のトップ10及びSPORT GLOBALで取り上げているプログラムは以下の通りだ。2021年に2位だったUniversity of Massachusetts AmherstOhio Universityを退け首位の座を獲得している。毎年細かな順位変動はあるが、過去3年間(2020年~2022年)のランキングで常にトップ10にいる大学は、University of Massachusetts Amherst、Ohio University、University of South Florida、The International Centre for Sport Studies (CIES)、George Washington University、Columbia Universityとなっている。これらの大学はランキング内でオレンジでハイライトしており、安定的に最高水準の教育、キャリアサポートを提供するプログラムと考えられる。

参照:SportBusiness Postgraduate Course Rankings 2022 (https://www.sportbusiness.com/postgraduate-rankings-2022/)

コロナ禍でリモートによるプログラム受講のニーズが高まった事もあり、例えば、Johan Cruyff Instituteは、30位にオンラインプログラムが、38位にオンキャンパスのプログラムがランクインするという現象も起きている。コロナの有無に限らず、オンラインでのプログラム提供は、社会人にとって活用しやすく魅力的だ。一方で、トップ10のプログラムの評価ポイントは、2021年は85.8ポイントだったが、2022年は83.10ポイントに下がっている。評価基準が毎年微妙に変わるので何とも言えないが、コロナがプログラムに及ぼした影響が少なからずあったのかもしれない。

SportBusinessランキング全体を見渡すと、大きく3つのカテゴリーが浮かび上がる。それぞれに特徴があるので、自身のニーズと照らし合わせて進学先のプログラムを選ぶ必要がある。

  1. CIES(FIFAマスター)、AISTS (国際オリンピック委員会所管)、Real Madrid Graduate School(レアル・マドリード大学院)など、スポーツ組織を母体とするプログラム
  2. Columbia University(コロンビア大学)、George Washington University(ジョージ・ワシントン大学)など、世界的に知られている名門大学
  3. Ohio University(オハイオ大学)、University of Massachusetts Amherst(マサチューセッツ大学アマースト校)など、スポーツビジネスに独自の強みを発揮する大学

他の世界ランキング同様、「欧米バイアス」があるのは間違いないが、オーストラリアのDeakin Universityが40位にランクインした以外は、2020年、2021年に引き続き、アジア・日本のプログラムはトップ40にすら1つもランクインしていない。東京オリンピック・パラリンピック2020年を契機に設立された、つくば国際スポーツアカデミー(Tsukuba International Academy for Sport Business)などに今後の奮闘を期待したい。

卒業生の平均年収

今年も、卒業後の平均年収データも公開されたので、参考までに掲載したい。スポーツビジネス修士プログラムの卒業後の平均年収は$100,784となっている。2021年の$84,593から20%弱増加しているのが興味深い。おそらく、The University of Liverpool Management School$210,271に平均が釣り上げられたのが要因だろう。また、総合ランキングと平均年収が必ずしも相関していない事にも気がつく。総合ランキングトップ10のプログラムで、平均年収トップ10にランクインしているのは、Columbia UniversityCIES(FIFAマスター)の2つだけだ。年収アップが大学院プログラム進学の大きな動機であれば、必ずしも総合ランキングが高いプログラムに進学する事が正解ではないという示唆がある。

参考までにアメリカのトップビジネススクールの卒業後の平均年収USD $175,789(U.S. News & World Report 2023)をベンチマークすると、平均年収ではまだ大きな開きがある。スポーツビジネスの魅力が増し、より優秀な人材が必要になり、平均年収も徐々に上がってくるというトレンドを期待したい。

理想の就職先

2022年のランキングでも、理想の就職先に関するサーベイの結果が掲載されている。トップ3がNBA(アメリカプロバスケットボール協会)、NCAA(全米大学スポーツ協会)またはNCAA加盟大学、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)またはNFL加盟クラブというのは改めて興味深い。アメリカのスポーツが、ビジネスとして魅力的であり、優秀な人材を惹きつけているのがわかる。その他では、サッカーの欧州5大リーグのEPL(英国プレミアリーグ)、La Liga(スペインプロサッカーリーグ)や、サッカーの国際組織であるFIFA(国際サッカー連盟)もランクインしている。2021年はIOC(国際オリンピック委員会)がランクインしていたが、2022年のランキングではトップ10に入らなかった。近年のオリンピック大会の運営状況や風評が影響しているのかもしれない。

ランキングの評価基準

ランキングの評価項目は以下の通り。サーベイ形式で実施される学生からの評価に最も大きなウエイトが与えらており、卒業後の雇用状況も重視されている。入学難易度ではなく、学生満足度、卒業後の進路(就業)に焦点が当てられている。サーベイは3年前の卒業生が対象とされ、2022年のランキングは、2019年の卒業生のフィードバックを反映した結果になっている。

*Sport Business
SportBusinessは、ロンドンに拠点を置くスポーツメディア・コンサルティング会社である。1996年の設立以来、グローバルレベルでスポーツビジネスニュース、データ、分析、コンサルティングサービス等を提供してきた。本社はロンドンにあるが、アメリカやシンガポールにもオフィスを持っており、世界中のスポーツビジネスの情報を蓄積、分析、アップデートしている。https://www.sportbusiness.com/

**Sport Business Review
Sport Business Reviewは、SportBusinessが月刊発行しているスポーツビジネスの専門誌だ。ハーバードビジネスレビュー、エコノミストなどの、スポーツビジネス版と考えるとわかりやすい。スポーツビジネス分野においてパイオニア的な専門誌である。

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