日時 | 6月4日(土)日本時間22時〜 |
参加者 | 現役生 ・甲斐夏輝(カイ・ナツキ)、European Sport Business School在学(スペイン) ・前川友穂(マエカワ・トモホ)、Columbia University在学(アメリカ) ・濱崎龍洋(ハマサキ・タツヒロ)、George Washington University在学(アメリカ) SPORT GLOBAL事務局 ・辻翔子 オランダ在住 ・椙山正弘(アジアサッカー連盟)マレーシア在住 ・阿部博一(アジアサッカー連盟)マレーシア在住 ・秋田佑亜 日本在住 |
企画の概要説明
SPORT GLOBAL現役生企画は、現在海外の大学院でスポーツ分野について学んでいる3人の日本人現役生に、入学までの経緯、実際の学校の授業、そして日々の生活で気付いたことなどをインタビューしていく企画です。2ヶ月に1回程度の頻度でインタビューをしていき、卒業、そして就職までの道のりをリアルに追いかけていきます。
第4回は、それぞれの大学院の卒業生ネットワーク、キャリアサポートについて話をしてもらいました。海外大学院は卒業生が強固なネットワーク、独自のエコシステムを構築している事が多く、そのコネクションを通じてインターンシップや就職が決まることも少なくありません。今回の参加者の大学院では、卒業生とどのような関りがあるのか?頷きがとまらない第4回です。
現役生の紹介
- 甲斐夏輝(カイ・ナツキ)さん
- 昨年3月に順天堂大学を卒業し、2021年10月よりバレンシア(スペイン)に渡り、European Sport Business School(ESBS)のMaster in International Sports Managementに入学。現在バレンシア在住。(Twitter: @puyochan_29)
- 前川友穂(マエカワ・トモホ)さん
- 三菱商事での勤務経験を経て、2021年9月よりColumbia University(アメリカ)Master of Science in Sports Managementに入学。現在ニューヨーク在住。(Twitter: @tomihonmimanofu)
- 濱崎龍洋(ハマサキ・タツヒロ)さん
- 住友商事での勤務経験と2年間のメキシコ駐在を経て、2021年8月よりGeorge Washington University(アメリカ)のMaster of Science in Sport Management入学。現在ワシントンDC在住。(Twitter: @TatsuhiroHamas1)
久しぶりなので近況報告
前川友穂さん(Columbia University)
無事に春学期終了しました。プログラム全体で36単位ありますが、その内24単位取り終えたので、残りを夏、秋学期で取って今年の年末には卒業になります。それと同時に卒業後の進路も真剣に考え始めました。6月から以前からインターンしたかったスポーツ系のコンサルティング会社でインターンを始めています。リーグ・クラブ・大学の収益強化についてリサーチ・コンサルティングをする会社で、様々な案件に触れることができ非常に学びを深化させることができています。
甲斐夏輝さん(European Sport Business School)
3日前に卒業セレモニーが終わりました。今月の半ばまでは授業が続きますが、座学はもうほとんどなく、施設訪問や、プレゼンテーションの仕上げをやる感じです。あと、インターンでフランスに行っていました。自転車の大会に帯同して、ソーシャルメディアを通じたプロモーションを勉強させていただきました。
濱崎龍洋さん(George Washington University)
無事に単位を取り終え5月頭に春学期が終了しました。夏休みが3か月ぐらいあります。夏休み期間中は、1.5単位(学期クラスは通常3単位)の授業をいくつか取る予定でいます。既に、Basketball Analyticsの授業を取っていますが、Rという統計ソフトを使って試合、戦略を分析をする授業で、バスケットボールのプレー戦略を分析するのは、初めての経験なので新鮮でした。あと、インターンを6月から開始しており、前回も少し触れましたが、同級生がオーナーをしているAmerican 7’s Football(7人制フットボール)のワシントンDCリーグでInternational Business Development担当をしています。担当業務は、*DMVエリアにあるアジア系企業、日本企業にスポンサー営業をしていく予定です。以前取ったLisaの授業で学んだ、営業&提案手法、アクティベーションなどを存分に活かせそうです。
*DMVエリア:ワシントンDC(D)、メリーランド州(M)、ヴァージニア州(V)にまたがるエリア。
僕は、日本の大学院時代は工学部で、プログラミングのC言語を勉強しました。正直今は一切使ってないけれど、プログラミング全体の仕組みや、ロジックなどを学べたのは良かったと思ってます。どこで役に立つかわからない!
卒業生との繋がりについて
強いか弱いかで言ったら、繋がりは比較的強いと感じています。具体的には、スポーツ産業に卒業生が多数いるので、プログラムのキャリアアドバイザーがハブとなり、インターンや就職の支援を積極的にしてくれます。言ったものか勝ちという部分は大いにあり、どんな卒業生と繋がりたいか継続的に伝えていると、条件に合う卒業生を繋いでくれます。あと、卒業生がプログラムやイベントに積極的に関わってくれています。例えば、授業で教授をアシスタントするTeaching Assistant(以下、TAとする。)として関わってくれている卒業生もいます。また、LinkedInにもプログラムの在校生・卒業生のグループがあり、そこで卒業生と繋がる事も可能です。
卒業生は、プログラムに対する想い入れが強い人が多いと思いますが、他のゲストスピーカーと比べて熱意があるなど、卒業生がプログラムに関わるメリットを感じますか?
Sports Entrepreneurship & Innovationの授業の一環で、プログラム卒業後に起業した人がセッションをしてくれ、社会に出てからのネットワーク、コロンビア大学のプラットフォームとしての魅力などを話してくれました。勿論、本人にとっても自分の会社の宣伝になるというメリットがありますが、同じプログラムを経た卒業生が卒業後に得たインサイトを現役生に提供するという観点ではメリットがあるので良い取り組みだと思います。また、その授業の教授が「ビジネスのエコシステムに入れるかが、ビジネスがスケールする上で重要になる」と常々口にするように、授業での出会いをキッカケにキャリアやビジネスに何かしらプラスになる可能性がある為、その点においても卒業生との交わりは有用だと思います。
TAで帰ってくる卒業生は、具体的にどんな形でプログラムをサポートしていますか?
TAは授業に関連する分野の実務を担当・経験している卒業生が多く、現場での経験をクラスルームに還元してくれています。基本的に授業は教授が仕切りますが、授業のフォローアップ、理論が現場でどのように適用されているかなど、教授の手の届きにくいところをカバーしてくれています。
卒業生との繋がりは強いと思います。実際、多くの講師は卒業生の人達です。例えば、以前*ラ・リーガ(LaLiga)で働いていた人が、スペインのサッカービジネスの話をしてくれたり、他にもセーリングの仕事をしている人が講師で来た事もあります。また、卒業後に起業をする人も多くいるので、彼らが講師として来たときは、企業の理念、戦略、プランニングなどの話を中心にしてくれます。TAも基本的には卒業生が担当していて、自分がいるのはInternational Classなので英語でのコミュニケーションが中心ですが、大学院の拠点がスペインなので、施設見学など現場にいくとスペイン語が必要になるので、TAの人が言語も含めてオペレーションを先導してくれます。キャリアサポートは専門家の人がいますが、卒業生ネットワークを大いに活用していて、自分がいずれ自転車業界で働きたいと相談したら、卒業生の中から探し出してくれました。LinkedInでの繋がりも強いので、自分から卒業生と連絡を取る事も可能です。
*ラ・リーガ(LaLiga):スペインのプロサッカーリーグ
日本だと、就職支援課みたいなところが就活サポートをしてくれるイメージだけど、卒業生ネットワークを活かしている印象はそこまでないのは、何故なんだろう。
日本でも徐々に*リファラル採用なんかも増えてきていますが、日米に於ける就職活動のシステムの違いが大きな理由だと思います。日本ではOB訪問などで卒業生と関わる事はありますが、実際の採用となると、人事対就活生とのやりとり、そして公式の採用プロセスで決まっていくので、卒業生との繋がりが就職の決定的な要因にならないのだと思います。アメリカだと、卒業生の推薦が人事から現場にいき、そこから採用が決まるケースも多いと思います。
*リファラル採用:社員に人材を紹介してもらう採用手法
日本でも体育会だと卒業生との縦の繋がりは比較的あるけど、卒業生のネットワークを活かす仕組み化がされていないのは、もったいないと感じます。
卒業生との繋がりは強いと思います。教授が授業の一環で必ずと言っていいほど卒業生をゲストスピーカーとして連れてきます。DCエリアで働く卒業生もそうですが、ジョージ・ワシントン大学は多様性が強みで、留学生も多いので、海外で活躍する卒業生も数多くいます。キャリアサポートの仕組みはありますが、Lisaの個人ネットワークが凄すぎて、キャリアサポートセンターを凌駕しています。インターン、就活など何でも相談出来ますし、メーリングリストで毎日のようにジョブポスティングの情報が流れてきます。今年から*ワシントン・ミスティクス(Washington Mystics)でプレーする、町田瑠唯選手の情報も事前に持っていたようで、日本語と英語が出来る通訳を探していて、僕にも打診が来ました。Lisaは30年以上、ジョージ・ワシントン大学のスポーツマネジメントプログラムに関わっているので、膨大な情報網を持っています。
*ワシントン・ミスティクス(Washington Mystics):ワシントンDCを拠点にする女子プロバスケットボールチーム。
これまで来たゲストスピーカーで一番かっこよかった人、印象に残っている人
卒業生の中に、自転車選手でありながら、ローラースケートの世界チャンピオンに何度もなっている女性の方がいて、彼女は卒業プロジェクトで、女子自転車チームをつくるという企画を出して、今はそれを実現しているので、かっこいいなと思いました。面談の際に、自分が自転車業界に興味があるという話をしたら、こんな人がいたよと紹介してくれました。まだそんなに大きな大学院ではないので、自分の興味のあるスポーツや組織のことを話すと、繋がりを持たせてくれることもあります。
日本人の卒業生との繋がりについて
日本人の卒業生が2人います。1人はSPORT GLOBALでも紹介された岡本菜摘氏で、もう1人は前職の会社の先輩で、今もニューヨークでスポーツに関わる事業をご自身でされている方です。コロンビア大学ではMBA、国際関係のプログラムに日本人が多いですが、スポーツマネジメントのプログラムは日本人が少ないので、その先輩の方には頻繁にお会いし、ちょっとした事を相談でき助かっています。
私もFIFAマスター在学時に日本人の同級生が1人いて、卒業プロジェクト、就活などの事をちょくちょく相談出来たので、とても助かりました。
意図的に取っていないのもありますが、日本人卒業生との関りはそこまでないです。入学前に少しリサーチしましたが見つからず、入学してから2人の日本人卒業生がいる事を知りました。1人は沖縄でプロバスケットボールチームのコーチをしています。パートタイムでプログラムを卒業したそうです。彼とはLinkedInで連絡を取って繋がりました。あとは、Lisaが主催したオリンピックに関するパネルディスカッションに、日本人卒業生がいました。日本の* IMGアカデミー(IMG Academy)のテニス分野で働いている方です。
*IMGアカデミー(IMG Academy):アメリカ合衆国フロリダ州にある世界的に有名なスポーツのボーディングスクール
ESBSでは、自分が初めての日本人なので日本人卒業生との関りはありませんが、来年、再来年の日本人の入学希望者から連絡がきます。スペインに交換留学で来ている日本人の大学生から連絡があり、サッカーとビジネスについて学びたいという相談を受けました。
大学のキャリアサポートについて
キャリアサポートは組織的に行っています。コロンビア大学はスポーツ業界のみならず、幅広いネットワークがあるので、学校のキャリアサポート経由で就職が決まるのが1つのパターンです。あとは、教授経由で就職が決まるパターンもあります。教授からの紹介はとても効果的で、今インターンしているスポーツ系のコンサルティング会社も、2人の教授から繋いでもらえたことで採用が決まった大きな要因の一つだと思います。
最近の大学院プログラムランキングでは、6か月以内に就職出来た人数も加味されるので、大学院側も就活サポートは意識しますよね。
コロンビア大学は、卒業後6か月以内に就職に関しては、昨年のランキング*では1位になっていました。
*2021年度スポーツビジネス大学院ランキング(Sport Business Postgraduate Rankings)
一つのパターンとしては、講師として来た卒業生とコネクションをつくりインターンをして、その後就職に繋がるというのがあると思います。キャリアサポートはありますが、スペイン国内の案件が多いので、もう少しグローバルに展開してもらえると良いかなとは思います。ただ、EU圏外の学生にもビザ取得の相談を受けてくれるので、それはとても心強いです。
私のようなアメリカ国籍を持っていない者からすると、就労ビザ取得がとてもハードルが高いですね。卒業後に勉強した分野で1年間はOPT(Optional Practical Training)という制度でビザ無しで働けますが、そこから就労ビザ(H-1B)に切り替えるのは抽選になる為、保証されていません。これは国の政策なので大学からのサポートは期待できませんが、合理的に考えれば、同じ能力であれば手続きで手間のかかる外国人より、アメリカ人を雇用すると思うので、これは仕方がないと思っています。
その点、国際機関は外国人を採用する正当性を立てやすいのかなとも思います。採用の一つの基準として、加盟国からバランスよく採用するという基準があるので。
私が就活をしている時は、国際機関でも、EUの学生が優先という組織もあったので、その時の国際情勢や、国際機関がある国よっても違うのかもしれないですね。
ジョージ・ワシントン大学のキャリアサポートの評価は米国内でも高いです。一方、スポーツマネジメントに於けるキャリアサポートは、先述の通り、Lisaを筆頭とした教授陣のサポートが強く、学校全体のシステムとしてのキャリアサポートとは一線を画しています。スポーツ業界は就活の方法が、他業界に比べより個人の関係に帰属する要素が強い為と理解しています。Lisaの圧倒的な個人ネットワークの話はしましたが、スポーツマネジメントのプログラムには他にもフルタイムの教授が4名いて、彼らは学生の就活に対して全面的にサポートしてくれます。あとはプログラム内に実務研修の授業があって、インターン、フィールドワーク、論文の3つからどれかを選びますが、多くの学生がインターンを選択します。この授業では、レジュメ、LinkedInの作り方。ジョブインタビューの練習などをするので、特に業務経験がない学生には、魅力的な授業だと思います。
SPORT GLOBALからクロージング
第4回は、それぞれの大学院の卒業生ネットワーク、キャリアサポートについて伺いました。今後大学院留学を考えている方にとって少しでも参考になりましたら嬉しいです!
現役生企画シーズン2の4回目のインタビュー、いかがでしたか?今後も定期的にインタビューを発信して参りますので、今後取り上げてほしいテーマや現役生に聞いてほしい質問などありましたら、こちらのお問い合わせフォーム、またはinfo@sportglobal.jpにメールをお送りください。