第1回では、筆者が海外スポーツ大学院への留学を実現するまでの経緯について、第2回では、具体的にどのような出願準備をしてきたのかについてまとめてきた。

そしてシリーズ最後となる第3回では、長期留学に向けたフィリピンへの短期語学留学の体験記をお届けする。

語学力のレベルアップさせる手段として多くの英語学習者が考えるのが語学留学だろう。中でも東南アジアへの語学留学はコスパが非常に良いと有名である。行ってみたいけど、本当に英語力って上がるの?ただ遊んで終わるだけじゃない?などという疑問を抱えている人もいると思う。そのような疑問を少しでも解決すべく、9月からイギリス・ラフバラ大学への大学院留学を控えている私が、5月中旬から1ヶ月間、フィリピン・セブに語学留学をしてみて、現地で実際に体験したり感じたりしたことをシェアしていく。私のように留学がすでに決まっていて、その準備として語学留学を考えている人たちはもちろん、これから留学に必要な英語試験対策(TOEFLやIELTS)として留学を考えている人たちも何かいいヒントが得られると思う。

著者プロフィール

井村瞭介(イムラ・リョウスケ)
現在地:ロンドン(イギリス)
職業:学生(ラフバラ大学のMSc Sport Business and Leadership(修士))
登場人物B

1998年生まれ、茨城県出身。幼稚園から大学まで選手としてサッカーをプレー。中・高校時代には鹿島アントラーズの下部組織に在籍。プロの道を諦めたのち、海外プロサッカークラブのフロントで働くことを新たな目標にイギリス・ラフバラ大学院に進学。スポーツビジネスを専門に勉強している。SPORT GLOBALインターン2期生。尚、井村瞭介のストーリーは「聴くスポーツグローバルシーズン3(#42「聴くスポーツグローバル」シーズン3: イギリス・ラフバラ大学留学を実現したイムの物語 – 井村瞭介(イムラ・リョウスケ)SPORT GLOBALインターン2期生 – SPORT GLOBAL PODCAST | Spotify でポッドキャスト)」でも聴けますので、是非お聴きください!

留学決定から渡航まで

第1回の海外大学院留学までの経緯編でも紹介したが、大学3年生の夏から交換オランダへの留学を控えていた私は、その準備として、フィリピン・セブに同じく1ヶ月の短期語学留学を予定していた。特にフィリピンへの語学留学は格安で、コスパがいいと評判だった。他にも、マルタや欧米圏にも語学学校のプランはあったが、ビザの関係で授業時間の制限があったり、東南アジアより授業料や生活費が高かったりなど、ハードルがかなり高かったため、最終的にフィリピンを留学先に選んだ。

留学費の振り込みまですでに終わらせていたのだが、その年の初めに新型コロナウイルスが流行して渡航ができなくなり、あえなく中止となってしまう。

それから約2年間、フィリピン留学のことはすっかり忘れていたのだが、イギリスへの大学院留学を控えていたある日、チラシで4月からフィリピンの語学学校が開校し始めたことを知る。コロナが始まってから退屈な毎日を過ごしていたし、留学に向けてまだまだ英語力が足りていないと感じていたため、いい機会だと思い急遽留学することに決めた。

イギリスビザ申請も6月に予定していたため、なるべく早く留学の準備に取りかかった。留学を決断したのが4月末だったことやフィリピンは6〜7月は台風シーズンであることから、5月から1ヶ月間学べる学校を探すことにした。少しでも手続きの手間が減るように、今回は少しお金がかかるが留学エージェントを利用して、留学決定からおよそ3週間で渡航までもっていくことができた。余裕がある人は、直接学校に手続きをするのもアリだと思う。実際、学校で一緒になった生徒の中には、自分で直接手続きしたという人もいた。エージェントを通さなければ、入学や保険などの面倒な手続きを自分でミスなく行う必要があるが、その分費用を抑えることができる。

今回の語学留学の目的

今回の語学留学の主な目的としては、とにかく英語に触れて、英語で考え、話す訓練をすることである。『英語脳』という言葉は皆さんもすでに聞いたことがあるだろう。イギリスの大学院の授業では、常に英語で物事を考え、インプット・アウトプットすることが高いレベルで求められる。何かを考えたり発言したりする度に頭の中で日本語⇨英語、英語⇨日本語の翻訳をしているようでは授業のスピードや周りの学生のレベルについていくことはできない。そこで、少しでもコストをかけずに英語を勉強できる環境で、次の長期留学の準備がしたいという思いで、フィリピン・セブに短期語学留学をすることに決めた。

こうして5月15日から6月12日までの1ヶ月間、フィリピン・セブにあるCPILSという語学学校に留学することとなる。

現地での留学生活

授業

開校されているコースにもよるが、今回私が勉強した通常コースでは、平日(月から金曜*祝日を除く)の朝8時から夕方5時まで1コマ50分×8コマの授業を受ける。授業間の休み時間も簡単に予・復習していたため、単純計算だと1日8時間、1週間で40時間、1ヶ月で計160時間授業を受けていたこととなる。毎回の授業終わりにかなりの量の宿題が出て、夜自分の部屋でその宿題を2〜3時間かけて終わらせる。これを含めると、1日に10時間以上は最低でも英語を勉強したことになる。

初日に、placement testというクラス分けのテストを受け、その結果によって授業のレベルや使う教科書が変わる。初心者からネイティブまで大きく6つのレベルに分けられ、私はレベル4だった。新型コロナウイルスの影響で、1〜3週目は全てマンツーマン授業(先生はフィリピン人)、少しずつ状況が良くなり、4週目にはマンツーマン3コマとグループレッスン5コマのスケジュールであった。このグループレッスンのうち2コマはネイティブの授業を受けることができた(アメリカ人とイギリス人)。

私がフィリピンにいた頃はまだスパルタコース(1日10コマ〜12コマ)が再開していなかったが、ちょうど帰国した後に再開したみたいで、朝から晩まで徹底的に英語を勉強してレベルアップしたいという人には、ハードだがこちらのコースも十分選択肢に入ってくると思う。

小さな教室がたくさんあり、基本的に生徒1人に対して一部屋が割り当てられている。各教室にはホワイトボード、机、椅子があるだけの非常にシンプルなものであった。基本的に現地ではエアコンは効きすぎていてとにかく寒い、かと思えば、急にエアコンが故障し、灼熱の中、汗だくで授業を受けることもあった。

講師の質に関しては、そこまで大きな問題はなかった。ただ、なまりが強く発音が聞き取りづらかったり、ネイティブ表現が通じなかったりすることはあった。先生によっては癖が強かったり能力が低いなと感じたりすることもある。講師は変更が可能なため、少しでも合わないなと感じたら我慢せずに学校側に伝え、授業時間を有意義に使うことをおすすめする。

実際に私も講師を変更したし文句も言いに行った。気になることがあれば、些細なことでもとにかく行動を起こした。その結果、講師や学校関係者と何度か言い合いをすることもあったが、英語で何かを主張して相手にぶつけるという経験は私自身それまであまり経験していなかったので、少々気分は悪かったがこれもいい経験になったと思っている。

コロナの影響で、入学申請時には原則として生徒は1人部屋しか予約できず、自分は2人部屋を1人で1ヶ月間使用した。ただ、コロナへの規制が徐々に緩和され、生徒の数もどんどん増えてきているため、6月からは周りには部屋を他の学生とシェアしている人もちらほらいた。

全体的には、フィリピンに行く前にイメージしていたものよりもずっといい部屋だったし、1人で生活するには十分すぎる環境だった。正直、もう少し部屋も狭くて汚いものを想像していたけれど、部屋は広いし、ベッドもしっかりしているし、トイレ・シャワーも特に問題はなかった。蚊がよく部屋に入ってくる以外は、そこまで虫も出なかった。自分の空間を維持しつつ、不自由なく1ヶ月を過ごすことができた。少し高くはなるが、自分は1人部屋をおすすめする。宿題で夜遅くまで徹夜する日もあるし、相手のスケジュールに合わせたり気を使ったりするのは正直しんどいと思う。もし部屋をシェアするのが外国人で英語しか使えないという状況であれば、それはそれでいい英語の勉強の場となるし悪くはないと思う。

食事

平日・休日(祝日)問わず、朝昼晩寮の食堂でご飯が出た。たまに友人と外出したりツアーに参加したりした時は外でご飯を食べる。ご飯の当たり外れは結構あったけれど、バイキング形式だったので量の面では特に問題はなかったし、現地の美味しいフルーツもある程度は楽しむことができた。味を気にしている人は、平日の夜や休日は外食をしたり近くにあるスーパーやコンビニで食事をとったりする選択肢もある。ちなみに私はストリートフードは怖くて食べられなかった。

寮の食事(または現地の食事全般)は人によって合う、合わないの差は大きいと思う。それが原因かどうかはわからないが、何人か体調不良や腹痛を訴え、授業を休む人もいたが、私は何度か軽い腹痛があった程度で済んだ。授業のパフォーマンスにも影響するので現地で食べる物には十分注意する必要がある。

ちなみにこれがとある日に寮で出たご飯である(これは当たりの方)。

授業外の時間

最初は、「自分は英語を勉強しに来たんだから、周りと仲良くする必要はない」と、とにかく休み時間やご飯を食べる時も1人でいて予復習をしたり英語のポットキャストを聞いたりしていた。これで悟りを開いた私は、初週の休日にフィリピンで最も有名な教会へ1人で訪れ、キリストへ祈りを捧げてきた。それはそれでいい経験になったが、やはり人間は誰かとコミュニケーションを取らないと生きていけないみたいで、心の中で少し寂しさも感じていた。そこで、2週目から休日に他の学生と一緒にツアーに参加して、周りの学生とも国籍を問わず積極的に話しかけたりするようにしてみた。特にツアーでは日本では体験できないようなアクティビティや見ることのできない景色に触れることで、いいリフレッシュになったし、久々に鳥肌の立つような経験ができた。ただ、時間の使い方は慎重に考えるべきだし、オン・オフの切り替えさえをしっかりとつけられるかがとても重要になってくる。

周りの学生

全体的な国籍の割合としては、日本が1番多く次に台湾、韓国と続き、中国からも少しずつ生徒が集まっていた。そのほかには、イスラエルから来ている方もいた。コロナ前には国籍の比率は均等だったらしいが、コロナが明けてからは圧倒的に日本から英語を学びにくる人が他の国と比べて多くなっている。年齢も幅広く、若い人では15歳ぐらいから高い人では60歳ぐらいまで、全体的には大学生から20代後半ぐらいまでの生徒が多かった。思っていたよりもさまざまなバックグラウンドを持った人たちが集まっていた。周りはみんな学生とか若い人たちが来るんだろうなと思っていたが、実際は自分よりも年上の生徒も多くて驚いた。皆仕事を辞めてキャリアチェンジに向けた切り替えやワーホリへの準備として語学留学をしていて、共に生活を送って話を聞く中で、特に社会人経験について多くのことを学ぶことができた。自分にとって語学留学といえば単に若い学生が英語のレベルアップや試験の対策のためにするものだというイメージを持っていたが、いい意味でそのイメージは変わった。

留学を終えた感想

実際に英語力が上がったのか?

初日と最終週に留学期間にどれだけ4技能が伸びたかを測るテストを受けた。結果的にはListeningを除いたReading、Writing、Speakingの3つが上がっていた。自分の中でどの技能がどれだけ上がったかという実感は留学中ほとんどなかったので正直不安はあった。1ヶ月という期間ではあったが、客観的なデータとしても英語力はバランスよく向上していた。

なかなか自分でどれだけ上がったのかを自己評価するのは難しいし、そこまで達成感を得られないかもしれない。それでも、このように客観的な数値として評価することで、何が伸びて何がダメだったかを振り返り、留学後にどの項目を重点的に鍛えていけば良いのか指標を立てやすくなると思う。

どれくらいの期間留学すべきなのか?

理想的な留学の期間としては、その人が留学時にどれくらいのレベルで何を目的とするかで変わってくる。

自分のようにすでに基本的な知識があって話す訓練を積んできた人にとっては1ヶ月から長くても2ヶ月がベストだと思う。単純に英語に多く触れ、英語を勉強したり英語で物事を考えたりする習慣は身につけられるが、もう一つ先のレベルに進むには限界があるように感じる。私は1ヶ月過ごして、これ以上やっても伸びないかなという感覚は実際にあった。特に最後の方は語彙の部分に課題を感じていたが、毎日の授業や宿題でなかなか新たな語彙を身につけ実際に使ってみるという余裕はなかった。

将来的に留学を考えているが、まだまだ英語に慣れていないという人は自分のように1から2ヶ月試しに行ってみるのもありだし、思い切って3ヶ月から半年勉強してみるのもありだと思う。最初は、何もかもわからなくてしんどいことの方が多いが、おそらく2〜3ヶ月(早い人なら1ヶ月)過ぎたあたりから少しずつ変化が出始め、結果にも表れてくる。英語が向上して自分で「できる!英語が少しずつ話せるようになってきた!」という感覚や成長のプロセスを実感しながら勉強できるのは、英語がまだまだ苦手だという英語学習者が長期滞在する大きなメリットだと思う。特に、語学留学後に長期留学の予定がすでに明確にある人は、この部分にどれだけの時間をかけるかは慎重に判断する必要がある。

TOEFLやIELTS、TOEICなどの英語試験の対策が目的の人1から長くても3ヶ月ぐらいが期間としてはベストなのかなと思う。試験の対策はもちろん、4技能をバランスよく勉強できて、どの技能が課題なのかを分析しやすい。留学前に1度実際に試験を受けてみて、なんとなくでもその感覚を掴んでおいて、留学後にもう一度レベルアップした対策万全の状態で目標スコアを取るというのが理想的なシナリオだろう。

長くなってしまったが、以上が、私のフィリピン語学留学体験記である。

学校ごとにプログラムや環境などに関して、多少の違いはあるが、基本的にはほとんどのフィリピン語学学校では今回シェアしたような形が取られていると考えて良いだろう。

今回紹介した東南アジアへの語学留学以外にも、語学学校や独自の英語学習コースなどのオプションを外国人学生に提供してくれる大学(院)は意外と多い。例えば、FIFAマスターでも英語強化したい人のためにレスターのドモンフォート大学がFoundation courseというサマーコースを提供している。東南アジアへの留学に比べて、金銭面やビザの手続などのハードルはグッと高くなるが、選択肢に入れるのもありかもしれない。

英語の勉強法に正解・不正解はない。それでも、明確な自己分析や目標を持ち、それに見合った正しい語学留学のプランを立てることができれば、きっと有意義な時間を過ごすことができるし、英語を効率よく向上させることができると思う。今回シェアした内容がこれから語学留学を考えている人たちにとって少しでも参考になれば幸いである。

ポットキャストでもこれまで紹介していたイム物語をまとめたものを音声で楽しめるので興味のある方はぜひ聴いてみてください!

ありがとうございました!

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