プロジェクト | 海外でスポーツを学ぶ現役生たち×SPORT GLOBAL |
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日時 | 2020年11月22日20時(日本時間) |
参加者 |
現役生 SPORT GLOBAL事務局 |
企画の概要説明
「海外でスポーツを学ぶ現役生たち」は、現在海外の大学院でスポーツ分野について学んでいる日本人学生に、入学までの経緯、実際の学校の授業やクラス、そして日々の生活で気付いたことなどをインタビューしていく企画です。
サポート機能を利用して、現役生を直接サポートすることも可能ですので、良かったら以下のボタンよりご支援ください。
現役生の基本情報
- 岩沢健太(イワサワ・ケンタ)さん
- フランスのリールにある、リール大学院に在学中です。授業はフランス語と英語で行われる環境にいます。現在在学3年目です。以下、岩沢さん。
- 山岸瑤子(ヤマギシ・ヨウコ)さん
- 国際オリンピック委員会(以下、IOC)とも関わりが深いスイスのローザンヌにあるInternational Academy of Sport Science and Technology(以下、AISTS)で修士プログラムに在学中です。岡山くんと同様に、本年度入学です。以下、山岸さん。
10月31日に引き続き第2回目のセッション、なんとなくコロナの話からスタート!
前回から約1ヶ月弱経ちましたが、各国のコロナの状況はどうですか?
フランスは明後日にマクロン首相からアナウンス1があり、そこでアップデートがある予定です。クリスマス期間にロックダウンを実施するのかが大きな論点ですね。
1: このセッション後にアップデートがあり、11月24日にマクロン首相によるアナウンスがあり、1月20日までレストランやバーなどの営業停止が発表されたそうです。
スイスでもフランス語圏側にいるので、感染者は増えている状況です。大学の授業も11月いっぱいはオンラインでの実施が確定しました。
欧州本土よりは少しマシな印象ですが、グラスゴーはレベル4でお店は閉まっているようです。自分がいるエディンバラはレベル3でカフェなどは開いていますが行動自粛中です。
自然とUEFA欧州選手権2(以下、ユーロ2020)の話に!
2: UEFA欧州選手権は欧州サッカー連盟(UEFA)が主催する、ナショナルチームのヨーロッパNO.1を決める大会。
岡山さん、スコットランド代表のユーロ2020本戦出場決定おめでとうございます!主要な国際大会に出場するのは1998年のフランスワールドカップ以来ということで、かなり盛り上がったんじゃないですか?
ありがとうございます!本戦出場が決まった次の日にクラスメートとサッカーをして盛り上がりました。サッカーの話だけにとどまらず、スコットランド独立、ブレグジット(Brexit)なんかの話も出ていたのが興味深かったです。本戦ではイングランドと同じグループなのでバチバチの戦いになりそうです。
ハンガリー代表の勝利も劇的でしたね!アイスランド代表が相手でしたが、アディショナルタイム92分にミドルシュートが決まり、2-1でハンガリー代表が勝利しました!本戦ではフランス、ドイツ、ポルトガルと同じグループなのでだいぶ激しいですが。
コロナ禍でも現地にいると、そこのスポーツ情報にアンテナが高くなるし、クラスメートとの掛け合いも、現地にいないと体験できない。こんな状況でも現地にいることの意味は、少なからずありそうですね!
これまで一番印象に残っている授業やゲストスピーカー
岩沢健太さん(リール大学)
入学直後に「スポーツと社会学」という授業がありとても印象深かったです。フランスに到着して間もなくで、フランス語もままならない状態だったので、最初は言ってること全然わからなかったのですが、スポーツの組織論的な部分や、公共財としてのスポーツなど、多くを学ぶことが出来ました。最終的には追試を受けるところまで行ったのも、今となっては良い思い出です。
あとは、現場レベルで活躍している人がゲストスピーカーとしてレクチャーをする機会が数多くあります。ユーロスポーツ3の全仏オープン4の担当者の方や、ツール・ド・フランス5のスポンサーシップのアクティベーション6担当者の方の話は、特に印象に残っています。
ツールド・ド・フランスは、地元に合わせたというか、一般的には主流でない方法でマーケティングしている話が面白かったです。宣伝車、キャラバンを活用してマーケティングをしています。開催場所や競技の特性によってローカライズを図っているのが興味深かったです。
3: アメリカ合衆国のメディア関連企業、ディスカバリー社の傘下にあるスポーツ専門放送局。4: テニスの4大国際大会。全仏オープンは赤いクレーコート(レンガを砕いた素材)で他のコートよりも球速が出にくく、ラリーが続く傾向があることから、粘り強くタフな選手に有利と言われている。5: 毎年7月にフランスおよび周辺国を舞台にして行われる自転車ロードレース。6: スポンサーとしての権利を活用してその企業が行うマーケティング活動。
全仏オープンは、例えばイギリス開催のウィンブルドン選手権なと、他の4大大会と何か異なるマーケティングやプロモーションをして差別化を図ろうとしているんですか?全仏オープンは、赤いクレーコートが特徴的ですね。
赤いクレーコートは特徴的ですよね!全仏オープンは、トップカテゴリーのチケットなど、ホスピタリティ関連の売上が全体の25%を占めているらしく、これは他の大会よりもかなり高い割合になっています。富裕層が大会を観戦するのが一つのステータスになっているのも理由だと思います。
山岸瑤子さん(AISTS)
AISTSは毎週2-3人ゲストスピーカーによるレクチャーがあるのが特徴的です。10月中旬には、Sport Event Management and Organisation Seminar (SEMOS)というイベントがあり、今年はオンラインでの開催でしたが、1週間ゲストを招いたセッションがあります。
このイベントは外部の人にもオープンになっていますが、高い参加費がかかります。AISTSの学生はカリキュラムの一環として無料で参加することが出来ます。
今年は、IOCの人たちはもちろん、パリ2024大会のコミュニティエンゲージメントの担当者、ロサンゼルス2028大会のブランディングの担当者、ロンドン2012大会のホスピタリティ担当者の方々がセッションをおこなっていました。
特に、IOCの方のセッションで東京2020大会の延期決定までのタイムラインや、意志決定の話が興味深かったです。オフレコですが日本政府やTOCOG(東京2020組織委員会)とのやり取りなどもシェアしてくれ、大会延期の舞台裏を垣間見ることが出来ました。
オリンピックムーブメントに実際関わっているエージェントの人たちが話をしてくれるのは、AISTSの大きな魅力の1つだね。こういう人たちとコネクションをつくれるのも魅力。
スポーツマネジメントというと、何となく文献や事例調査が多いイメージがありますが、AISTSでは、データなんかを使った量的分析をおこなう授業はありますか?
AISTSでは、1週間ごとに特定テーマのモジュールをこなしていきますが、冬以降にデータを活用した授業があります。IOCと共同研究をしているリサーチャーがカリキュラム作成に携わっているので、実務的な授業だけではなく、理論的な授業もバランスよくあります。
岡山駿さん(エディンバラ大学)
では次に岡山さんには、スコットランドのウイスキーの話を中心に聞いていきたいと思います。
阿部くん、真面目にやってください。
実は近くの商店で1本買って飲んでみています。他のリキュールと比べてウイスキーは旨味があって、とても飲みやすいと思います。
セメスター1の授業はこれまで3科目ありました。Research Methods、Sport Resource Management、Sport Marketing & Communicationです。
その中でも特に印象に残っているのは、Sport Marketing & Communicationで出てきた話で、1年ぐらい前に起きた事例なんですが、NBAバスケットボールのあるチームのジェネラルマネージャーが香港の民主化運動に賛同する趣旨のツイッターを上げたことが、中国本土で問題になり、中国でのNBA放送が一時中断になったことがあったんです。
中国は、ヤオ・ミン(姚明)選手がヒューストン・ロケッツで活躍して以来、国内のバスケットボール人気がすごいあるから、反響も大きかったのかな。
そうですね。あと、この話で感じたことは、スポーツと政治は切り離せないという事ですね。スポーツの世界では、これまでヨーロッパの考え方主流で物事が進んできたと思いますが、近年中国のプレゼンスが徐々に大きくなってきていて、中国の意向を無視出来ない状況になっていくのでは?と考えさせられました。
スポーツと政治は大きなディスカッショントピックだね。中国は習近平氏がサッカー好きというのもあってか、国をあげてサッカーをサポートしている。学校の授業では毎週1回サッカーの授業が導入されていて、グラスルーツが大きな盛り上がりを見せている。
フランスサッカー連盟(FFF)とリーグアン(LFP)がサッカーのフランス国立アカデミーが中国にオフィスを立ち上げたように、中国との国家事業が進んでいますよね。
中国人学生が多いのもあってか、授業でアジア関連のトピックを取り上げてくれるのは個人的には良いなと思っています。
FIFAマスターでは、The future is Asia!というのは良く言っていたけど、実際アジアに関する講義は年間で3‐4つぐらいだったので、アジアを題材にしたトピックを積極的に取り上げてくれるのは魅力的ですね。
【後編】に続く。お楽しみに!
第二回目の現役生インタビュー、いかがでしたか?
【後編】では日本とヨーロッパの授業の違いや、それぞれの現役生のお気に入りスポットなどを伺っていきますので、どうぞお楽しみに!
今後も定期的にインタビューを発信して参りますので、今後取り上げてほしいテーマや現役生に聞いてほしい質問などありましたら、こちらのお問い合わせフォーム、またはinfo@sportglobal.jpにメールをお送りください。