プロジェクト 海外でスポーツを学ぶ現役生たち×SPORT GLOBAL
日時 2021年7月14日21:00(日本時間)
参加者

現役生
・岩沢健太(イワサワ・ケンタ)、リール大学院在学(フランス)
・岡山駿(オカヤマ・シュン)、エディンバラ大学在学(イギリス)
・山岸瑶子(ヤマギシ・ヨウコ)、AISTS在学(スイス)

SPORT GLOBAL事務局
・辻翔子(MyCujoo) オランダ在住
・椙山正弘(アジアサッカー連盟)マレーシア在住
・阿部博一(アジアサッカー連盟)マレーシア在住
・秋田佑亜 日本在住

現役生の基本情報

岩沢健太(イワサワ・ケンタ)さん
登場人物A
フランスのリールにある、リール大学院の卒業がすでに決まっております。卒業後は帰国し、フランスの電機会社に就職予定。以下、岩沢さん。
岡山駿(オカヤマ・シュン)さん
登場人物B
スコットランドのエディンバラにあるエディンバラ大学の修士プログラムに在学中です。卒業は11月の予定。以下、岡山さん。
山岸瑤子(ヤマギシ・ヨウコ)さん
登場人物C
国際オリンピック委員会(以下、IOC)とも関わりが深いスイスのローザンヌにあるInternational Academy of Sport Science and Technology(以下、AISTS)で修士プログラムに在学中です。現在は東京オリンピックの仕事のため、東京にいます。卒業は12月の予定。以下、山岸さん。

第5回目の現役生インタビュー企画、まずはEUROが終わったばかりなので、各国の盛り上がりについて。

登場人物A山岸瑶子さん

スイスはめちゃめちゃ盛り上がっていた。個人的にはフランス対イングランドを決勝予想にしていた。エクセルを作ってくれたクラスメートがいて、みんなで予想をしながら楽しんだ。

登場人物A岩沢健太さん

そんなスイスにフランスは負けました。クラスメートで負けると思っている人はいなかったので、まさかの結果で、その日のFacebookはお通夜だった。

登場人物A岡山駿さん

スコットランドは20年ぶりのメジャー大会出場だったが、1引き分け2敗、そして大会を通して1点しか決められず、残念過ぎる結果だった。イングランド戦に限ってはパブの予約が取れなかったが、ほとんどの試合をパブで観戦し、スウェーデン対ウクライナはグラスゴーでスタジアム観戦した。平日の夜だったので20%くらいしかファンが入っていなかったが、良い試合だった。

登場人物BSG事務局:辻

私もデンマーク対ウェールズをスタジアムで観戦したが、試合前の演出含め、やっぱライブは良いなぁと感じた。

登場人物BSG事務局:阿部

日本の東京オリンピックが無観客に決まった中、EUROの決勝があれだけ盛り上がっているのを見ると、ちょっとやられたなと思う。

登場人物BSG事務局:椙山

ヨーロッパの雑さには驚いたが、「少し感染が拡大しても仕方ない」とある程度見切って行けちゃうのはすごいと思う。

登場人物A山岸瑶子さん

オリンピックに関しては、国民の気持ちを考えると辛い。修学旅行を我慢している小学生がいる横で、メガイベントを開催する意義をちゃんと伝えられていないのが切ない。

登場人物BSG事務局:椙山

東京五輪はとにかく残念なニュースが多い印象。あれで国民が盛り上がるはずがない。国民がそういう報道を望んでいるのかと思ってしまう。ひたすら残念。

いざ本題!卒業研究の進捗状況について。

岡山駿さん(エディンバラ大学/イギリス)

登場人物A岡山駿さん
  • テーマはローカルスポーツ団体がどのようにオリンピックを経験し、どのようにサービスを高めたかについて。
  • データは47都道府県のスポーツ協会を対象としたインタビューを通して収集。すでに3つインタビューを完了しているので、データコレクションは順調。あとはディスカッションの部分を追加するだけなので、とりあえず締め切りには間に合いそう。
  • スポーツ普及のレガシーに関する研究だが、どうしてもレガシーは持続可能ではないところがこれまでの問題だったので、オリンピックを契機にローカルスポーツ団体がサービス提供の能力を高められたら良いなぁと思っていた。しかし、東京オリンピックとローカルスポーツ競技団体の繋がりはそこまで強くないので、サービスを高めるのは難しいという結論になりそう。
  • 一つ驚いたのは、「国体」の存在。国体が開催されることによって新しい施設ができたり、補助金が出たりなど、日本スポーツの発展に貢献してるという印象を受けた。
登場人物BSG事務局:阿部

長崎のケースで、国体が来ることによってJリーグ規格のスタジアムが建つというのを目の当たりにした。日本の場合、国体を通じてスポーツ関連の大きな資金が動く印象。中国にも国体に相当する大会があるので、文献を比較したら面白いかもしれない。

岩沢健太さん(リール大学/フランス)

登場人物A岩沢健太さん
  • 今年の2月になってテーマを変えて、4ヶ月で書き上げたので、突っ込みどころ満載の論文になった。
  • テーマは東京オリンピックのブランドガバナンスについて。特に開催都市契約にサインした国際オリンピック委員会や東京都などのステーキホルダーに注目。インタビューはできなかったので、ソフトウェアを使ってコンテンツを分析。
  • 面白かったのは、東京都やJOCはプレスリリースをSNSではなく、ホームページに出していたところ。ホームページをわざわざチェックする輩は少ないと思うので、個人的にはSNSに出せばもう少し国民の支持を集められたのではと思った。森さんの発言があったときも、JOCは1ヶ月ぐらいTwitterで何も発信しなかった。
  • 一昨日マクロンさんがロックダウンに関する記者会見を開いたが、自分のTwitterでGIF動画をSNSにあげることで若者を引き付けており、これはブランドガバナンスの参考にもなると感じた。
登場人物BSG事務局:辻

日本のスポーツ団体はまだ事務連絡用にSNSを利用している印象がある。一方で、海外スポーツ団体はBlack Lives MatterやLGBTQなどの社会的の動きに反応したり、ネット上の誹謗中傷に抗議するために一斉にSNSをボイコットしたりなど、SNSを通して自分たちのブランドを確立させようという意識が強い。

登場人物BSG事務局:椙山

組織の立場からすると、リスクマネジメントのことをどうしても考えてしまう。良い部分が100個あってもひとつのミスで終わってしまうのがSNS。

登場人物A山岸瑶子さん

IOCは政治的メッセージに関わってはいけないというのが根強く残っている組織なので、あまりプロアクティブに世の中の出来事に反応できないジレンマがある。

山岸瑤子さん(AISTS/スイス)

登場人物A山岸瑶子さん
  • チームプロジェクトは授業終了とともに提出済み、想像以上に反響は良かった。テーマはBuilding social value legacy through mega sports eventsについて。色々な人にインタビューした上で、以下の4つのテーマに絞ることにした:
    ①Sports participation, health and well-being
    ②Economic growth, employment and innovation
    ③Urban development and  environmental sustainability
    ④Social and cultural inclusion
  • その4つのlegacy pillarsが、開催地選考の段階から大会後までSocial Value Legacyとして広がるように普及するには最低でも以下の5つのツールが必要と決定づけた:
    ①レガシーファンデーション
    ②ファンディング
    ③パートナーシップ
    ④イニシエーション
    ⑤メジャーメント(いわゆるKPI,評価)
    その5つを開催地選考からイベント終了後までしっかり計画して、機能させることによってソーシャルレガシーが実現可能というのを提案した。
  • 個人の卒論はCommunity Engagement at mega sports eventについて。ローザンヌ2020とパリ五輪のCommunity Engagement担当の人にインタビューし、現在文字起こししているところ。8月末提出。オリンピックが終わったら完成させる予定。 
  • 20個の組織へインタビューしていて分かったのは、ファンディングが課題ということ。また、都市によって、Capabilityが違うというのも分かった。ロンドンやパリはこれまで何度もメガイベントを開催しているので比較的開催都市のパブリック・プライベートセクターが互いに柔軟に連携し、ソーシャルバリューレガシーの活動を計画・運営できている場面があるが、リオやリマは経験値が少ないので、かなり苦戦したという話を聞いた。

最後に、今後海外に留学したい日本人に伝えたいこと。

登場人物A岩沢健太さん

伝えたいのは一つだけ、どんどん挑戦してください。周りに色々言われるかもしれないが、前例がないからと言って、選択肢を狭めないでほしい。自分自身でも気づいていない部分もあるかもしれないので、ポテンシャルをどんどん高めてほしい。

登場人物A岡山駿さん

大学生までは海外に住んだことがほぼなく、留学する2年前まではTOEICのスコアもそこまで良くなかったので、自分ができたら、誰でもできるという勇気づけをしたい。
目標を大学院入学ではなく、スポーツを通してどういう社会を作りたいかという先のところに設定すれば、自ずと結果もついてくると思うので、目の前のハードルも下がるはず。学校に提出する書類や英語の勉強はあくまで手段に過ぎない。

登場人物A山岸瑶子さん

大学1年の時に、ツイッターで翔子さんに連絡を取ったのが始まりで、そのおかげでIOCの仕事に繋がった。IOCで働いた経験は、海外の人と勉強する上でも自信になったので、あのときアクションを取った自分を褒めてあげたい。
オリンピックムーブメントの中で働いている人は大会のデリバリーに専念してしまい、社会問題意識など世間とかけ離れてしまうように見える。IOCで働いてからはそういう問題も見えるようになって、自分と世間のずれを埋めるために勉強するようになったので、今後留学する人はそれを念頭に置くと良いかもしれない。

SPORT GLOBALからのクロージング

登場人物ASG事務局・秋田

僕自身も勉強になった。2回と短い中でしたが、非常に刺激的だった。同世代が海外で勉強をしている。自分自身ももっと勉強しないといけないと思う。

登場人物BSG事務局

現役生企画はSPORT GLOBALとしても初めての企画だったが、コロナ禍の中で逞しく頑張っている三人の姿に毎回元気をもらいました。やはり現地からの生の情報は刺激的!是非来シーズンも新たなメンバーとこの企画を続けたいし、このメンバーの活躍も引き続き追いたい。

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