お久しぶりです!卒論発表まで一ヶ月を切ったKotti です!
と書こうと思っていたら、発表してからもう相当月日が経ってしまったKottiです!(汗)ごめんなさい!!

早速なのですが…
スポーツ心理学者として、とっても重要な質問です!

読者の皆さん、”メンタルスキル”と”メンタルテクニック”、2つの違いを言えますか?そして、メンタルトレーニングって何ですか??

記事を最後まで読んでいただければ答えが分かるかもしれません!!

まず今日は前者のメンタルスキルについて詳しくお話しします。どうぞ宜しくお願いします!

Kottiのプロフィール

Kotti (広瀬琴乃音さん)
現在地:ロンドン(イギリス)
職業:学生(St. Mary’s University大学院のMSc Applied Sport Psychologyコースを2021年9月に卒業)
登場人物B

日本で生まれ育ち、11歳の時に父の転勤で渡仏。その後もともと習っていたピアノを本格的に取り組むようになり、高校に上がる前に音楽と学業を両立するコースに合格し転入。15歳の時に両親が日本に帰国した後も、一人フランスに残り学校・レッスンの行き来な日々を過ごす。その頃から、どうやったら、”メンタルが強くなれるのか”と考えながら過ごし、パリ大学で心理学を専攻、英国Southampton大学に一年間の交換留学を経て卒業。その後、ずっと興味があったスポーツ心理学を学ぶ為にロンドンにあるSt. Mary’s University大学院に進学。MSc Applied Sport Psychologyコースに在学中。
▶︎St. Mary’s University大学院の詳細についてはこちらへ

メンタルスキルとメンタルテクニック

Weinberg と Gould (2011)はメンタルスキルを“心的な満足度と身体的なパフォーマンス向上を目的とする運動中に使われる認知能力と尽力” と定義しています。簡単にいうと、”パフォーマンス向上”と、“気持ちよくプレーする”為の心的要素です。

主なメンタルスキルは5つあります。

・Motivation – 動機付け

・Attentional focus – 集中力

・Self-confidence – 自信

・Emotional control – 感情のコントロール

・Mental toughness – レジリエンス

パフォーマンスに関わる習い事やお仕事をしている方は気になる言葉がたくさん並んでいるのではないのでしょうか?

どんなに技術的に長けていても、本番で緊張やプレッシャー、不安に負けてしまったら、100%出しきることはできません。その為に、メンタルスキルを鍛えることは体を鍛えるのと同じくらい重要です。オリンピックなど、競技レベルが高くなるにつれ、心の強さの違いが勝負の決め手となるように見えたりしますよね。

また、”これならできる” (=自信・自己効力感)や ”辛くてもここを乗り越えればあとは大丈夫”(=メンタルタフネス) という感覚は、モチベーションをあげるのに、実はとても大事なエンジンだったりします。タスクの後回し…という著者もものすごーーく頻繁に体験するこの感覚も、実は自信をつけることで改善したりします(*)。メンタルスキルはどれも大事で、繋がっていることが多いです。
(*)後回し、先送りの改善方法は他にも色々あるので自信だけが解決策ではないですが、近年の研究で”いい成績を取る自信”が低い学生ほど後回しをする傾向があるという結果が出ています。(Svartdal et al., 2021)

これらのメンタルスキルは、”スキル=能力” ということで、誰でも、獲得可能な技能です(Weinberg & Gould, 2011)。自分自身をよく知って、目的や、自分の短所・長所を客観的に見つけ出す行為や、メンタルテクニックの練習・応用を繰り返せば、ゆっくり身についていき、そして、鍛え続ければ、マスターすることができるのです。

ここで書いてて思ったのですが、2020年から今も人気が続いている「鬼滅の刄」の主人公・炭治郎くんがとても分かりやすい例ですね。ある特殊な呼吸法を彼は習得、そしてマスターするのですが、その呼吸法の練習だけでも多くの時間をかけています。地道な積み重ね得た、その呼吸法は集中力をはじめとし、感情のコントロールして不安や逆境をうまく使ったり、目的意識を明確にして耐える力(=レジリエンス)にも影響しているように思えます。

呼吸法の他にも、イメージトレーニングやルーティーンを作ること、あとは、セルフトークを意識的にするなど、メンタルテクニックもいろいろな方法が有効だと科学的に証明されています。このことについては第6回に詳しく話したいと思います!

メンタルトレーニング

メンタルトレーニングは、このスキル獲得のプロセスです。そのプランを立てたり、クライエント一人一人に合ったやり方を見つけるのがスポーツ心理学者なんですが、メンタルトレーニングのお手伝いをする前に、まずは各メンタルスキルは何なのか!というのを勉強することが必要となります。スポーツ心理学者の仕事として、専門用語や、根拠になる研究結果などをクライエントに分かりやすいよう掘り下げて教えるというのがありますね。”教えるために、学ぶ”、この繰り返しはスポーツ心理学の基本だなぁと私は感じています!

最後に、一番最初の問いの答え合わせで今回はおしまいです。長らくお待たせした回も、最後まで読んでくださりありがとうございました!

答え

・メンタルスキル=誰でも”習得”可能な良いパフォーマンスに必要な能力(筋トレでいう筋肉:上腕筋やハムストリングなど…)

・メンタルテクニック=メンタルスキル獲得を手助けしてくれるエクササイズ(筋トレでいうダンベル上げやベンチプレス)

・メンタル(スキル)トレーニング=メンタルテクニックを使ってメンタルスキルを獲得するプロセス(筋トレでいう…トレーニング!笑)

まとめ

  • メンタルスキルとテクニックは似てるようでちょっと違う!
メンタルスキルメンタルテクニック
動機付けリラクゼーション(呼吸法)
集中力イメージトレーニング
自信ルーティーン
感情のコントロールセルフトーク
レジリエンス  など目標設定  など
  • 競技レベルでテクニックの使い方が変わってくる
  • スポーツ心理学者は、クライエントのより効果的なスキル向上ために、専門家としての目線とクライエントの目線、両方でメンタルスキル&テクニックを学ぶ必要がある!

参考文献

Svartdal, F., Sæle, R. G., Dahl, T. I., Nemtcan, E., & Gamst-Klaussen, T. (2021). Study Habits and Procrastination: The Role of Academic Self-Efficacy. Scandinavian Journal of Educational Research, 1-20.

Weinberg, R.S. & Gould, D. (2011). Foundations of Sport and Exercise Psychology (4th ed.).

Champaign, IL: Human Kinetics.

SPORT GLOBAL編集部より

登場人物BSG事務局:辻

久しぶりのKotti企画、ものすごくわかり易くて勉強になりました!普段何気なくやっているルーティーン、目標設定やイメトレはメンタルテクニックに分類されるのですね。メンタルスキル、テクニックとトレーニングの関係性を意識するだけで得られる効果がぐんと変わるような気がします!

登場人物BSG事務局:阿部

この記事を読んで【五郎丸ポーズ】を思い出しました。これはメンタルテクニックのルーティーンですね。ちなみに【五郎丸ポーズ】の生みの親である荒木香織さんは、アメリカの大学院でスポーツ心理学を修めています。具体例として五郎丸ルーティーンをシェアします。(参照:https://newswitch.jp/p/4501
(1)蹴る位置にしゃがみ、ゴールポストを見て、ボールを2回まわしてからセット。
(2)立ち上がり、後ろに3歩下がり、左に2歩動く。
(3)右腕をひじまで脇につけ、手のひらを前に押し出すように腕を振る。
(4)身体の前で手を組む【五郎丸ポーズ】。
(5)8歩の助走で蹴る。
※いつでも、どんなケースでもこれらの動作を、同じ順番でする。

登場人物BSG事務局:椙山

メンタルスキルの要素は、スポーツに限らずどの分野でも、パフォーマンス発揮のために習得が推進されることだから、普段から意識している人も多いのでは?その習得を手助けしてくれるメンタルテクニックに関して、プロフェッショナルの第3者にサポートしてもらっているトップアスリートが増えてきている(?)のは納得。

次回の告知

次回のテーマはどうやってアスリートの”必要” を知る?です。どうぞお楽しみに!

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