皆さん、こんにちは。イギリスの大学院も全授業が終了になり少し落ち着いているKotti です。時間が経つのは早いですね!
今日は心理学者にとってもしかすると一番大切かもしれないスキル、カウンセリングスキルのお話をしたいと思います。

Kottiのプロフィール

Kotti (広瀬琴乃音さん)
現在地:ロンドン(イギリス)
職業:学生(St. Mary’s University大学院のMSc Applied Sport Psychologyコースに在学中)
登場人物B

日本で生まれ育ち、11歳の時に父の転勤で渡仏。その後もともと習っていたピアノを本格的に取り組むようになり、高校に上がる前に音楽と学業を両立するコースに合格し転入。15歳の時に両親が日本に帰国した後も、一人フランスに残り学校・レッスンの行き来な日々を過ごす。しかし学業との両立のプレッシャー、一人で海外に暮らすという緊張感、元々あったあがり症の悪化も合わさり精神的に辛くなり、最終的にプロのピアニストの道を諦める。その頃から、どうやったら、”メンタルが強くなれるのか”と考えながら過ごし、パリ大学で心理学を専攻、英国Southampton大学に一年間の交換留学を経て卒業。その後、ずっと興味があったスポーツ心理学を学ぶ為にロンドンにあるSt. Mary’s University大学院に進学。MSc Applied Sport Psychologyコースに在学中。
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スポーツ心理学の主なアプローチ方法

まず初めに少しだけ、題名にある”アプローチ方法”について少し説明させてください。アプローチ方法は言い換えれば、流派です。一般的な心理学と同じように、スポーツ心理学も、一つの問題には、色々な解決方法があると考えられています。そのいくつかある解決方法に良し悪しはなく、大事なのはクライエントに合うか、ということです。お薬と同じような感じですね!

違いを生むのが流派なのですが、簡単にいうと、問題の見方、捉え方、介入の方法などがそれぞれの流派(=アプローチ方法)によって全く異なります。

スポーツ心理学には主に3つのアプローチ方法があります。

  1. Cognitive-behavioural(行動認知心理学)
  2. Humanistic(人間性心理学)
  3. Psychodynamic(精神分析)

上記の3つ以外にもアプローチ方法はありますが、主流はこの3つです。どれも長い歴史の中使われ進化してきたものなので1つだけを選ぶのではなく、うまく混ぜ合わせて自分なりのやり方を見つけることもできます。

3つのアプローチ法の違いを知ることはもちろん大切なのですが、一番大事なのは、どのやり方が自分に合っているか、興味があるか、なぜそうなのかを論理的に、しっかり知ることです(これをRationale と言います)。

カウンセリングスキルについて

このタイミングでもうひとつのテーマ、カウンセリングスキルについてお話しさせてください!カウンセリングスキルは、上で挙げた3つのアプローチ、全てにおいて、必要・重要なスキルです。最初に述べたように、カウンセリングスキルがあって初めて心理学者としてクライエントのお話を聞き、学んだ知識を直接誰かの為に活かせられるようになると、私は信じています。それほど大事ってことです!

カウンセリングスキルの中で一番ポピュラーかと思うのが、『傾聴』です。名前の通り、傾いて聴くことです(笑)

カウンセリングに行くとき皆さまは何を求めて行きますか?(行くと思いますか?)答えは人それぞれだと思いますが、恐らく、モヤモヤした気持ちや解消できていない不安をただただ聴いてもらいたいからなのです。聴いてもらえたという感覚が得られると、意外と解決法を自分の中に発見できたりするのです。

実は、話を聞くというのはただただ、「うんうん」と聞けば良かったりするものです。しかし、大事な人が心の内を話してくれているのを前に、「うんうん」だけ回答するのは意外と難しかったりします!(親に相談した時、何度アドバイスをもらって違うノーーーって気持ちになった事はありませんか?(笑) それは親が私たち子供のことを思いすぎて、先回って口出ししたくなっちゃうからです)

しかし、カウンセリングに行って「うんうん」だけでは少し物足りないでしょう。「聴いてもらえた」とセッションを思い返してもらうために、いくつかのテクニックをご紹介しましょう。まず、『傾聴』は二種類に分かれていて、出来事を聴くfactual listening と心の声を聴くemotional listening があります。

Factual Listening

最初のfactual listening に使うテクニックを3つご紹介します。

  • Summarising: クライエントが言ったことを端的にまとめて、重要な部分をピックアップする。これは、巷のコミュニケーション法でたまに聞く、”オウム返し” と似ています。カウンセラー側も、話の続きを聞くために適度に話をまとめることは大事です。クライエントに話し返すため、話の理解の確認にもなります。
  • Paraphrasing: クライエントが言ったことを言葉や順番を変えて言い返す。これはクライエントが体験したことから距離を置いて客観的に事柄を見れるようにするお手伝いにもなります。
  • Clarification: クライエントの言ったことへの理解を確かめたり深めたりするために質問する。これはとても重要です。なぜなら、間違った解釈でセッションを進めることは、クライエントの”聴いてもらえた” という感覚から遠ざかってしまうからです。

Emotional Listening

Emotional listening では 上記3つのテクニックに加えて、Reflection ということをします。カウンセラーがクライエントの感情の鏡となって、共感的理解を深めるテクニックです。カウンセラーは factual listening から得た情報を元にクライエントの視点に立って、クライエントの気持ちや感じ方を自分の言葉で表現します(端的に!)。それを聞くことによってクライエントは、自分自身の感情を、物事から距離をとることによって、より明確に、客観的に見られるようなります。

このように、『傾聴』はコミュニケーションの一種なのですが、力強いパワーを持っています。

私は、このカウンセリングテクニックはクライエント

とカウンセラーの間に信頼関係をもたらすのに大いに重要だと思います。どんなに科学的根拠がある治療法でも、この信頼関係なしでは、効果は半減してしまいます。

なので、どのアプローチを取ろうとも、『傾聴』のスタンスは、心理学者として第一に学び、経験と共に、ずーっと学びを深め続けていくものだと、私は信じています。

少し長くなってしまいましたが、今回はここまで!

まとめ

  • 3つの主流のアプローチ。“どれ”よりも“なぜ”特定のアプローチを選ぶのかの方が大事
  • クライエントの“聴いてもらえた” は一種の特効薬
  • どのアプローチにも信頼関係が鍵で、カウンセリングスキルは、その後のセッションの効果を倍増させてくれる!

次回の告知

次回はお待ちかねの「メンタルスキル」についてお話したいと思います。お楽しみに!

SPORT GLOBAL編集部より

登場人物BSG事務局:辻

「傾聴」はスポーツだけではなく、日常生活やビジネスの場でもよく使われますが、このように学問的な視点で分析したり、色々な種類やテクニックについて考えたりするのは初めてだったので、とても勉強になりました!

登場人物BSG事務局:阿部

僕が受講した国際コーチング資格コースでも、傾聴テクニックはかなり時間をかけて学んだ。相手が言った事の余分な部分をそぎ落として返してあげる事で、内省する機会を生み出す。スポーツ現場に応用可能なスキルです!

登場人物BSG事務局:椙山

「傾聴」は力強いパワーを持っている。聴くことから始まるのがカウンセリング。シンプルだけど、これがどれだけ多くのアスリートや関係者を助けていることか。

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